「高大接続改革の進捗状況」に関する意見

「高大接続改革の進捗状況」に関する意見

2017年6月14日
一般社団法人 情報処理学会
会 長  西尾章治郎

以下のとおり,2017年6月14日付で2件の意見書を提出しましたのでご報告いたします.
(協力:情報処理教育委員会)


2017年6月14日
文部科学省初等中等教育局高校教育改革PT
(「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」担当) 御中
一般社団法人情報処理学会
会長 西尾章治郎

件 名 : 「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」実施方針(検討素案)
氏 名 : 一般社団法人 情報処理学会
職 業 : 団体
住 所 : 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館4F
電話番号: 03-3518-8374

意見:

要点:
「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」は、共通教科情報科のうち「情報I」についても実施されるべきである。

内容:
「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」実施方針(検討素案)
では、
○「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」の概要
3.認定の枠組み
<これまでに示されてきた実施内容の概略>
において、
・国数英で共通必履修科目を上限。義務教育段階の内容を一部含める。
と記されている。これは
「高大接続システム改革会議「最終報告」(平成28年3月31日)」
Ⅲ 高大接続システム改革の実現のための具体的方策
1.高等学校教育改革
(5)「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入
ウ 具体的な仕組み

「○ このことを前提に、平成31年度導入当初からの実施に当たっては…国語、数学、英語で実施する。」
とあることに基づくものであること、およびそれを受けて、論点整理や「試行調査」などの準備が重ねられてきたことは承知している。
そこでは同時に
「○ さらに、次期学習指導要領の改訂に向けた検討や国語、数学、英語の実施状況等を踏まえながら、次期学習指導要領が実施される段階において、地理歴史や公民、理科等を追加導入する。」
とあるとおり、地理歴史や公民、理科等も順次追加されていくものと推察される。
いっぽう、その次項において
「…その際、情報については、問題の発見と解決に活用するための科学的な考え方等を育成するものとして、新たな科目の在り方について中央教育審議会教育課程企画特別部会において現在検討されていること等を踏まえる。」
とある。
現時点ではここでまず方針として示されていることを、これからさらに具体化し確実に推進すべきである。すなわち、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」には、地理歴史や公民、理科等とならび共通教科情報科も、次期学習指導要領において「情報I」が必履修となることにあわせ同様に追加されるべきである。
明治時代から続く各教科・科目の教育はいまも変わらず重要ではあるが、現代において情報教育の重要性はそれらに決して優るとも劣らない。「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の実施においても、今後、そのことが十分考慮されるべきである。
以上
 

2017年6月14日
文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室 御中
一般社団法人 情報処理学会
会 長  西尾章治郎

件 名 : 「大学入学共通テスト」実施方針(案)
氏 名 : 一般社団法人 情報処理学会
職 業 : 団体
住 所 : 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館4F
電話番号: 03-3518-8374

意見:

要点:
「大学入学共通テスト(仮称)」では共通教科情報科も実施すべきであり、少なくとも「情報I」については平成36年度からは必ず実施されるべきである。

内容:
「大学入学共通テスト(仮称)」実施方針(案)では、
5.出題教科・科目等 において、

○ 共通テストの出題教科・科目等は、別表1のとおりとする。
※ 次期学習指導要領において高等学校の教科・科目が抜本的に見直される予定であることを踏まえ、平成36年度以降は教科・科目の簡素化を含めた見直しを図る。

とある。ところで、共通教科情報科に関しては、

「高大接続システム改革会議「最終報告」(平成28年3月31日)」
Ⅲ 高大接続システム改革の実現のための具体的方策
3.大学入学者選抜改革
(3)「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入
ウ 具体的な仕組み
① 対象とする教科・科目等
(次期学習指導要領下における基本的枠組み(平成36年度~))
において、

・ 次期学習指導要領における教科「情報」に関する中央教育審議会の検討と連動しながら、適切な出題科目を設定し、情報と情報技術を問題の発見と解決に活用する諸能力を評価する。

とある。現代における情報分野の重要性をふまえ、ここで方針として示されていることを、具体化し確実に推進すべきである。すなわち、「大学入学共通テスト(仮称)」では、共通教科情報科についても必ず実施すべきである。本来は「情報I」「情報II」についてともに実施するのが望ましいが、少なくとも次期学習指導要領において共通必履修科目となる「情報I」については、平成36年度からは必ず実施されるべきである。

従来から、共通教科情報科を大学入試センター試験(次期大学入学共通テスト(仮称)を含む)において出題するよう、本会をはじめとする学協会から要望があがっているのは周知の通りである。
※大学入試センター試験における「情報」出題の提言
http://www.ipsj.or.jp/release/kyoiku20120127.html

本会が大学入試センター試験(次期大学入学共通テスト(仮称)を含む)で共通教科情報科の出題を主張する理由は、大学へ入学する前段階において、文系・理系を問わず「情報」についての素養を身に付けておくことが必要不可欠であるという点にある。学校教育法第30条の第2項に示されている「基礎的・基本的な知識・技能」「知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」という学力の3要素が基盤となった、「問題解決能力」の涵養が現代の教育目標となっている。PISAにおいても、「これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるか」という「問題解決能力」を測定している。高等学校における共通教科情報科こそが、初等・中等教育における各教科での学びを、問題解決能力として総合的に昇華させる中心的教科であることは疑う余地のないところである。日本学術会議 情報学委員会 情報科学技術教育分科会において策定された「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準」も、初等・中等教育における情報教育からの系統的学習を念頭に置いており、初等・中等教育から高等教育に至るまでの体系的な情報学に関する学びが求められている。

なお、現在、文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業情報分野において、思考力・判断力・表現力を問う問題のあり方について研究が進んでおり、次期学習指導要領に基づくテストとして実施することとなる平成36年度以降の本格実施に向けての、下地を整える作業が続けられているところである。
※久野靖:思考力・判断力・表現力を測るには?,情報処理,Vol.58,No.8(2017年7月15日予定)
以上