大学入試センター試験における「情報」出題の提言
大学入試センター試験における「情報」出題の提言
2012年1月27日
一般社団法人 情報処理学会
会長 古川 一夫
さて、高校で開講されている教科の学習を充実させるには、その教科の内容の充実は勿論ですが、個々の生徒の学習達成の適切な評価も欠かすことはできません。その際、大学入試センター試験(以下、センター試験)は、数学、英語をはじめとする多くの教科・科目において、学習達成の標準的な基準を考える上で指針というべき役割を果たしています。
しかし現時点において、教科「情報」はセンター試験の出題教科となっていません。このことは、わが国の将来のためには情報教育が重要であるとの認識に立ち、すべての高校生が学ぶ教科として導入された「情報」の充実にとって適切な状況とはいえません。すなわち、現在教科「情報」は、多くの高校において、学習指導要領では必ずしも主たる内容ではない、特定ソフトウェアの操作方法ばかりを教える授業が行われたり[2]、場合によっては「情報」の時間に他の教科の内容を教える(いわゆる未履修)など、適切でない扱いがなされているのが現状です[3]。これには複数の原因がありますが、学習達成度の適正な評価が行われていないこと、とくにセンター試験において「情報」が出題されていないことも大きな原因となっているものと思われます。
「情報関係基礎」はこれまで、工業、商業などの専門学科の生徒に配慮するという位置づけで数学の中に置かれてきたものであり、各専門教科の「情報技術基礎」や「情報処理」などに相当するものでした。このため、「情報関係基礎」の出題を単に廃止することについては、専門学科で学習する生徒の大学への進路を狭めることになるため、私共としては容認できないと考えています。
付記
「情報関係基礎」の受験人数が少なかったことには、現在の試験時間割配置では数学II・Bなどの選択の都合上,「情報関係基礎」を受験したくてもできないという制度の問題が大きく影響していたものと考えますが、上記方策によりこの問題も併せて解消可能であることを指摘させて頂きます。
参考文献
[1] 情報処理学会, 日本の情報教育・情報処理教育に関する提言2005 (2006.11 改訂/追補版), 2006.
http://www.ipsj.or.jp/12kyoiku/teigen/v81teigen-rev1a.html
[2] コンピュータ教育開発センター, 高等学校における情報教育の実態調査実施報告書, 2009.
http://www.cec.or.jp/ict/hsjoho.html
[5] 平成21年告示高等学校学習指導要領に対応した平成28年度大学入試センター試験からの出題教科・科目等について(中間まとめ)
http://www.dnc.ac.jp/modules/news/content0470.html
関連サイト
更新履歴
2012年01月27日 初版
2012年04月05日 関連サイト[1]を追記しました。
以上