初等中等教育における一貫した情報教育(情報学教育)の充実について(提案)
初等中等教育における一貫した情報教育(情報学教育)の充実について(提案)
本会は2015年4月24日、他の4団体と連名で、文部科学大臣、文部科学省初等中等教育局長、文部科学省生涯学習政策局長、文部科学省生涯学習政策局情報教育課長、中央教育審議会会長に宛てて、文書「初等中等教育における一貫した情報教育(情報学教育)の充実について(提案)」を提出致しました。
平成 27 年 4 月 24 日
文部科学大臣 下村博文 殿
初等中等教育における一貫した情報教育(情報学教育)の充実について(提案)
日本情報科教育学会
日本教育工学会
一般社団法人 教育システム情報学会
一般社団法人 情報処理学会
情報学教育研究会
日本教育工学会
一般社団法人 教育システム情報学会
一般社団法人 情報処理学会
情報学教育研究会
情報教育の実践において,いわゆる「情報活用能力の育成」がPCの操作やソフトウェアの利用法が主であるような誤解が一部に見られることがあります。本来,情報教育は,情報に関わる充実した内容を対象にして適切に実施されるべきものであります。これを本協議会では情報学注1の教育(情報学教育)と位置付けています。その際の情報学とは,人文社会から自然科学までの幅広いものであって,これを「文理融合の情報学」と呼んでいます。
今日の社会においては,情報及び情報技術は重要な基盤となっていて,わが国の初等中等教育における情報教育(情報学教育)は,今後一層の充実が求められています。
情報学教育関連学会等協議会では,以上のような考えに基づき,次の事項を取りまとめました。つきましては,情報教育(情報学教育)のさらなる充実に向けてご検討下さるようにご提案申し上げます。
事項1:21 世紀型能力を高めるための教育を革新する。
様々な問題を解決して新しい価値を創造する等の21世紀型能力を高めるためには,初等中等教育段階でのプログラミング教育等を念頭に入れた新しい問題解決学習を必修化する必要があると考えます。また,情報と人間や社会が複雑に絡み合って生じる諸問題を解決するための文理融合的な視点も強化する必要があると考えられます。
事項2:小学校段階における有効な情報学教育として,独立教科を新設する。
小学校段階では学習指導要領に扱うべき内容も評価の必要性も明示されていません。情報科教育のための独立教科の設置が必要であると考えます。
事項3:中学校段階における有効な情報学教育として,独立教科を新設する。
中学校では,技術・家庭科で扱われていますが,情報教育以外の内容とのバランスが不明確であり,結果的に,育成すべき資質・能力の基準が教員の判断に委ねられています。情報教育のための独立教科の設置が必要であると考えます。
事項4:高等学校段階における情報学教育をより一層充実させる。
現行の教育課程では,「社会と情報」と「情報の科学」の 2 科目が設置されていますが,情報科教育の充実のために,現行の2科目を統合し,必履修科目として「情報I」を設置すること,およびその発展として,「情報II」(選択)及び「情報III」(選択)を設置することが必要であると考えます注2。
以上
- 注1:情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議(平成9年10月)には,「・・・そのために情報教育が果たすべき役割は,・・・,情報に関わる学問(情報学)の成果を適切に教育内容や教育方法に取り入れ,情報活用の経験と情報学の基礎的理論と手法とを結びつけさせることで,・・・」と記述され,また,「・・・なお,ここでいう情報学は,従来のコンピュータや情報通信などの分野を中心とした情報科学に,人間科学や人文社会学等への学際的な広がりを持った学問である。」と規定されている。
- 注2:情報Ⅰ,情報Ⅱ,情報Ⅲの内容については,各学会等から複数案を提案しています。