国際会議の会計処理について

国際会議の会計処理について

国際会議開催者(財務委員)は、必ずご確認のうえ会計処理をすすめて下さい。

1.国際会議における会計処理の要点

国際会議の会計処理の原則は通常の企業会計の原則と同じですが、個々の国際会議は継続して存在するものではなく一定期間内に終了する性格のものであり、会計処理も一定の期間内に行われますから、一般企業の会計処理よりも簡単であるといえます。

国際会議会計の特徴
  • 会議終了後に固定資産が残らないので減価償却などがない
  • 未収金や未払金などがない(あっても小額である)
  • 引当金など将来を予測した処理を行う必要がない
しかしながら、専門の経理担当者がおらず、学術が専門のスタッフが経理を担当する場合が大部分なため、会計処理に必要以上のエネルギーをとられる結果となっています。そこで、会計処理に十分に習熟しておられない方でも国際会議の会計処理が行えるように、会計処理に必要な事項をできるだけ簡潔に解説します。

2.会計処理体系

会計報告を作成するためには、収入および支出を一定の基準に従って区分し、集計する必要があります。国際会議の会計処理体系に関しては、会計報告を提出すべき対象(通常は、国際会議を主催又は後援する学会等)が会計規程を定めておりますから、これに準拠して会計処理を行ってください。

3.参加者名簿の作成

国際会議を開催する場合には必ず参加者名簿を作成するはずです。参加料は、多くの場合、参加資格と申込時期に基づいて設定することになります。以下の手順で参加者名簿を作成してください。

(1)参加者を参加資格に分類します。

  • 会員
  • 非会員
  • 学生 など
 (2)さらに、各参加資格を申込の時期により分類します。
  • 事前参加申込者(事前払込)  
  • 当日参加申込者(当日支払)  
(1)の参加資格別では非会員、会員、学生の順で参加料が高くすることで、負担能力と会議や学会への貢献度を考慮が可能です。(2)の申込時期では、当日申込者は事前申込者より高く設定されていることが通常のようです。事前申込をしてもらうことで、会議の予算が立てやすく、会議や懇親会の会場の規模を適切に設定することが可能となるでしょう。
事前登録者に関する参加者名簿は事務局自身(国際会議開催団体事務担当のこと、以下同じ)が作成するか、又は作成を委託する場合には必ず事務局が最終確認を行ってください。
参加者名簿の作成に際しては、以下の項目は必須となります。
  • 氏名、住所など一般的な項目
  • 個人認識番号(ID)
  • 参加資格
  • 申込時期
  • 徴収すべき参加料の額
また、必要に応じ、参加する会合の一覧、懇親会への参加の有無、同伴者の有無、などの付加的費用が発生する項目も名簿に加えてください。
当日参加申込者に関する参加者名簿については、例えば二葉式の申込用紙(領収書兼用でよい)に当日参加申込者に記入してもらい、これを事務局が保存し、作成した参加者名簿と照合できるようにしてください。なお、申込用紙は連番とし、書損じも廃棄しないでください。

4.参加者名簿の修正

参加者の二重登録、参加の取消、特定の参加者の参加料の減免、参加料の未納者に対する債権の放棄などの事実が発生した場合には参加者名簿を修正するとともに、適切な会計処理を行う必要が生じます。また、これに伴い手続きが妥当であることを明示する必要が生じます。

(1)参加者の二重登録、参加の取消、参加料の減免があった場合
その事実を証明する資料を添付して責任者の承認を受けてください。また、参加料の未納者に対しては参加料の納付の督促をした上で、責任者の承認に基づき債権の放棄をしてください。

(2)重複して参加料払込みを受けた場合
返金すべき参加料を預かり金として会計処理し、返金した時には預かり金(の返金)として会計処理してください。

5.収入の処理方法

収入科目には
(1)参加料収入
(2)販売収入
(3)その他収入
・賛助金収入
・補助金(助成金)収入
・広告料収入
・展示収入
などがあります。以上はあくまで例示ですので、実際には会計報告を提出すべき対象(主催団体)の会計処理規定に従って区分・集計してください。
収入の会計処理については、すべての収入が正確かつもれなく計上される必要があります。そこで、各収入科目について、以下の諸点に留意して会計処理を行ってください。

(1)参加料収入
参加料は多くの参加者から徴収するものですから、収入のうちで最も誤りが発生しやすく、したがって最も慎重に扱う必要がある項目です。
参加料は「(a)事前に参加者から徴収するもの」と、「(b)当日に参加者から徴収するもの」があります。このうち、当日に徴収するものには、特に誤りが起きやすいので、一層の注意が必要です。

(a)事前に参加者から徴収するもの(事前参加申込者) 
事前参加申込者の入金には、クレジットカードによる振込、銀行振込、郵便振替による振込などが使われます。複数の方法が使われる場合もあります。いずれにせよ、現金による受取は避けてください。
事務局の負担を軽減するため及び誤りを少なくするためには、多少のコストはかかりますが、委託業者に徴収とその集計を委託し、事務局は徴収すべき金額の管理をする方がよいと思われます。ただし、この場合でも、委託業者に当該国際会議固有の銀行口座を開設するように要請し、その口座の入出金の状況について事後的に事務局がチェックできるようにしてください。
なお、入金者と入金額が適切かをチェックするため、参加予定者が入金する際には入金者名と認識番号を必ず記入するよう申込要領及び申込用紙に明記してください。

(b)当日参加者から徴収するもの(当日参加申込者) 
当日参加申込分については、あらかじめ参加者名簿が作りにくいこと、参加料を現金で徴収することが多いことなどのため、収入の部では最も誤りが発生しやすく、留意が必要な項目となっています。したがって、当日参加申込者からの参加料を誤りなく徴収し、また、後で正確性をチェックするためには正確な参加者名簿を作成すること、及び徴収した金銭の適切な管理が必要です。
現金を受取る者と領収証を発行する者は別にする方がよいのですが、事務局の人数や受付のスペースの関係で同一者が両方の事務を行わざるを得ない場合もあるでしょう。なお、現金の管理には専任の者がいることが望ましいでしょう。現金の管理が甘いと盗難などの事故を起こす恐れがあります。現金の受取及び管理は業者に委託し、参加者名簿及び領収証の管理を事務局が行う方法をとれば、事務局の負担の軽減及び事故発生の危険を軽減できるでしょう。この場合も、業者は参加料の徴収とその集計、事務局は徴収すべき金額の管理を分担することになります。
その上で、当日収受した金額はやむを得ない場合を除き、直接支払いに充てることなく、一旦は銀行口座に入金することが正確な経理を行うためには極めて重要です。現金で受取り、その現金を直接支払に充てることは会計処理上最も誤りを起こしやすい行為であることに留意してください。

(2)販売収入
国際会議の会場において、資料や報告書は参加者に配布されるものですが、余部を希望者などに販売、寄贈、残りを廃棄することがあります。
それぞれ以下のように管理して下さい。

    (a)販売
    販売単価、販売部数、販売金額を記録し、販売金額を管理するとともに、資料や報告書について、作成部数、配布部数、販売部数、残存部数、廃棄部数を記録しておいてください。

    (b)寄贈
    残存部数の一部を研究室などに寄贈する場合には、寄贈先及び寄贈部数の一覧表を作成してください。

    (c)廃棄
    廃棄する場合には、責任者の承認を受けた後、所定の部数を廃棄してください。

(3)その他の収入
その他の収入としては、賛助金収入、補助金(助成金)収入、広告料収入、展示収入などがあります。これらは殆どが事前に明示され、また件数も比較的少ないので取扱は容易です。

(a)賛助金収入、補助金(助成金)収入など
協賛者からの協賛申込書など(名称はまちまちです)に記載された金額と実際の入金額との照合を行い、全ての出資者から所定の金額が振込まれていることを確認してください。また、出資者から所定の金額が振り込まれる際に出資者から当該国際会議宛ての賛助金額、補助金額の支払い確定通知書(またはこれに類するもの)が発行されるはずですので証拠書類として入手・保管してください。

(b)広告料収入、展示料収入など 
相手先からの注文書又は当方の事務局からの請求書に記載された金額  と実際の入金額を照合し、全ての注文者から所定の金額が振込まれていることを確認してください。なお、いずれの場合についても、銀行口座など記録の残るものへの振込による入金にしてください。

(c)受取利息
最近のゼロ金利を反映して、少額ですが預金金利が付きます。記帳した時に通帳に記載されますので、これも収入として計上しておいてください。

6.支出の処理方法

支出については、支出の事実に対して適切な金額を適切な科目に漏れなく計上することが肝要です。
そのため、以下を徹底してください。

  • 支出については可能な限り領収証を徴し、保管してください。また、請求書を入手できるものについては、必ず請求書を入手・保管してください。
  • スタッフの少額の交通費など領収証を徴しにくいものについては出金伝票に記載して、支出の事実、支出金額、支出科目を記録・保管してください。なお、出金伝票は文房具店で売っています。
  • 可能な限り銀行口座からの振込によって支出を行えば、支出の事実と支出金額を明確にできますので、誤りを著しく減少させることができます。

7.現金の取扱

現金の受取及び支払(入出金)については必ず現金出納帳を作成・記録してください。
入金項目は、参加費等の受取、銀行からの引出、事務局担当者からの短期借入金などになります。
出金項目は、現金による経費の支払、スタッフなどが立替えていた交通費などの経費の精算、銀行への預入などになります。
上記の金額を忘れずに記帳した上で、適時に手許にある金額と現金出納帳の残高を照合することにより記帳漏れや誤りを防ぐことができます。また、決算を行う前には手許現金を全て銀行に預け入れ、手許現金をゼロにしておくとよいでしょう。 
なお、スタッフが立替えていた金額は短期借入金という科目で記帳してください。立替金とは、会計の主体(この場合は国際会議)が他の者のために立替えて支払ったときに使用する科目ですので、ここで使うのは不適切です。

8.預金の取扱

国際会議に関する入出金が始まる前に必ず会議名義などによる銀行口座を開設してください。

(a)口座の開設 
口座を開設するための最初の金額はスタッフが立替えることになります。このときの会計処理上の科目としては短期借入金を使用してください。後日、この金額をスタッフに返金するときは短期借入金(の返済)として処理してください。

(b)入金項目
・参加料の口座への振込
・協賛金などの口座への振込
・当日参加者から徴収した現金の預入
など

(C)出金項目
・事務局による現金の引出
・経費の支払のための口座からの振込
など

多少の振込手数料はかかりますが、経費の支払は可能な限り口座からの振込によって行ってください。 
これにより支払の事実、支払金額が客観的なものとして記録されますので、誤りが少なくなります。振込の内容は預金通帳に記載されますが念のため、口座からの振込に際して銀行から発行される振込証は必ず保管しておいてください。
会場費の支払、業務委託先への支払、講師や招待者への送金など支出金額の大きいものについては口座からの振込が可能なはずです。
アルバイトなどへの賃金の支払いも可能なものについては銀行振込にしてください。
このようにすれば、現金による支払は少額の交通費、宅急便の支払、着払いの支払、スタッフによる直接購入品の支払などに限定できますから、会計処理の正確性をチェックすることが相当に容易になります。

9.源泉徴収について

(1)招待講演者への謝金に関する源泉所得税 
国際会議では、国際会議開催者側で講演者を招聘し招待講演をしてもらうことがよくあります。招待講演をしてもらい招待講演者に対して謝礼の支払いをする場合には、源泉所得税を納める必要があります。
○課税率 国内在住者:10.21%、海外在住者:20.42%
2013年1月1日から25年間(2037年12月31日まで)に亘り、所得税の源泉徴収義務者に対し、復興特別所得税(国内0.21%、非居住者0.42%)が徴収されます
復興特別所得税について:http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/fukko/index.htm

但し、海外居住者の招待講演者で「租税条約に関する届出書」を所轄税務署へ届け出た場合には源泉所得税は免除されます。

(a)海外居住者の招待講演者に対して謝金を支払った場合
招待講演者手取り額の20.42%を源泉税として税務署に納める。

(例:謝金手取り額2万円の場合には5,131円の源泉所得税を納める)
(詳細は、以下国税庁のホームページ参照)
   http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/gensen36.htm
   http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2884.htm

※但し、租税条約締結国居住者については、「租税条約に関する届出書」 
を2部作成し税務署に届ければ免除になる。

「租税条約締結国」は以下国税庁のページ参照
http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/report/2003/japanese/tab/tab31.htm

「租税条約に関する届出書(様式一覧)」は以下国税庁のページ参照
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/01.htm

「租税条約に関する届出書」は以下国税庁のページ参照
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf2/256.pdf

(b)国内居住者の招待講演者に対して謝金を支払った場合
 招待講演者手取り額の10.21%の源泉税として税務署へ。
(例:謝金手取り額2万円の場合には2,274円の源泉税を納める)
(詳細は、以下国税庁のホームページ参照)
   http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2795.htm

【源泉所得税の納付】 
謝金の支払に伴って徴収した源泉所得税を納付するためには、納付する前に「給与支払事務所等の開設届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。また、国際会議が終了し、源泉所得税の納付もすべて終了した後に「給与支払事務所等の廃止届出書」を提出する必要があります。これらの届出書の用紙は税務署に行けば交付してくれますし、国税庁のホームページからのダウンロードにより入手することもできます。

「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」は以下国税庁のページ参照 
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm

「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」は以下国税庁のページ参照 
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/pdf2/009.pdf

 

(2)臨時雇用者(アルバイト)への源泉所得税 
全部ボランティアによって運営するのでない限り、アルバイトなどに賃金を支払うことになります。これに伴って、支払の主体(国際会議)には源泉所得税の徴収義務が発生します。
賃金の支払に伴って徴収した源泉所得税を納付するためには、納付する前に「給与支払事務所等の開設届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。また、国際会議が終了し、源泉所得税の納付もすべて終了した後に「給与支払事務所等の廃止届出書」を提出する必要があります。これらの届出書の用紙は税務署に行けば交付してくれますし、国税庁のホームページからのダウンロードにより入手することもできます。

「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」は以下国税庁のページ参照
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm

「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」は以下国税庁のページ参照
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/pdf2/009.pdf

また、賃金の支払者に対しては翌年1月31日までに給与所得の源泉徴収票を発行する必要があります。
なお、臨時雇用者(日々の労働に対して賃金が支払われる人や2カ月以内の短期雇用者)で日々の賃金が9,300円未満の人については源泉徴収額は0円ですので、源泉徴収する必要はありません。アルバイトの人は、通常の場合は臨時雇用者に相当すると思われますので、9,300円未満か以上かに留意してください。

以上の手続き及び納付が煩わしければ、次のような方法があります。

(1)業者に賃金の支払事務及び源泉所得税の納付事務を委託する方法です。この場合でも「給与支払事務所等の開設届出書」や「給与支払事務所等の廃止届出書」を所轄税務署に提出する必要はあります。

(2)アルバイトなどは委託業者と雇用関係を結ぶこととし、そこからの派遣という形態をとることです。この場合、賃金の支払や源泉徴収の義務は全て委託業者に移転します。その賃金相当額は委託費の中に反映され、幾分コスト高となる可能性はありますが、事務局の負担を軽減するという点ではよい方法です。

上記、「(1)招待講演者への謝金に関する源泉所得税」および 「(2)臨時雇用者(アルバイト)への源泉所得税」の処理は、手続き及び納付処理に手間がかかるうえ面倒ですので、しっかりとした事務委託業者に頼んで処理をしてもらうことをお勧めします。

10.消費税について

消費税に関連する事項は2つに大別されます。

(1)国際会議の運営主体が消費税の納税義務を負うか否か、すなわち課税業者か非課税業者かという問題です。

(2)消費税を支払う立場から、委託業者からの請求のうちどこまでが消費税の課税対象となるかという問題です。

(1)課税業者か非課税業者か

(a)国際会議を運営する主体が常設の機関でない場合
常設でなければ非課税業者となるため、消費税の納付は必要ありません。

(b)国際会議を運営する主体が常設の機関である場合
※国際会議を運営する主体が常設の機関でない場合は、この項は飛ばしてください。
常設の機関が国際会議を運営する場合は少ないと思われますが、一応この場合についても考えておきましょう。まず、収入のうちどこまでが消費税の課税対象となるかを検討する必要があります。物品の販売や役務の対価すなわち広告掲載料収入、展示収入、販売収入などは課税売上であり、協賛金は役務の対価ではないので不課税であることは明らかです。収入の大半を占める参加料については役務に対する対価とみなされるか否かが論点となるでしょうが、会議の資料や論文の対価、あるいは講演者の発表の聴講という役務の対価であるとみなされ、課税売上とされる可能性が高いと思われます。
一方、消費税の控除の対象となる課税仕入については、人件費以外はほぼ課税仕入れとなりますし、人件費でも派遣の形式をとったものは課税仕入れとなります。
したがって、納付すべき消費税の目安は(税込処理ならば)
(収支差額+人件費(派遣は除く)-協賛金・賛助金)×5/105
となります(税抜処理であれば最後の項は5/100となります)。したがって、収支差額や人件費が大きくなければ消費税の負担が大きくなることはないでしょう。なお、実際の消費税の計算・納付に際して不明な点がある場合には税理士と相談してください。

(2)委託業者からの請求のうち消費税の対象となるもの
物品の購入または役務の提供に対する支払が消費税の対象となります。したがって、委託業者への委託費の支払のうち役務の提供に対しては消費税が加算されますが、業者による立替支払分は役務の提供ではないのでこれに対して消費税は発生しません。業者からの請求書を精査するときはこの点に注意してください。なお、賃金に関しては、賃金の支払事務や源泉税の納付事務を委託した場合は立替払いですので消費税の対象となりませんが、雇用関係を委託業者と結び、労働力の派遣という形態をとった場合には役務の提供になりますので消費税の対象となります。この点が分かりにくい場合には税理士と相談してください。

11.誤りやすい会計処理

国際会議の会計処理において次のような誤りがしばしば発見されます。

(1)収入と経費を相殺して会計処理してしまうケース

参加料などを郵便振替で行う場合に郵便振替手数料を控除した金額で参加料が計上されていることがあります。参加料の徴収を業者に委託している場合に委託手数料を控除した金額で参加料が計上されていることがあります。協賛金などが振込手数料を控除して振込まれている場合に振込手数料を控除した金額で協賛金収入が計上されていることがあります。
これらはいずれも参加料などは本来の金額で計上し、振込手数料などは別途経費として計上してください。

(2)負債を収入とし、負債の返済を経費として処理してしまうケース

参加料の重複振込があった場合に全額が収入として計上され、返金を行った場合に返金額が経費として計上されてしまうことがあります。
重複振込のうち返金すべき額は預り金として、返金を行った場合には預り金(の返金)として会計処理してください。

(3)2種類の経費を混合して計上してしまうケース

会場費などを銀行振込によって支払った場合に会場費などが振込手数料と合算された金額で計上されていることがあります。会場費などと振込手数料は分離してそれぞれ計上してください。

12.会計監査を受ける為の準備

収入金額または支出金額の総額が1千万円を超える国際会議は会計監査が必要です。1千万円未満のものは学会監事による会計監査が必要です。
ところで、以上述べてきたことが全てきちんと行われていれば、会計監査を受ける準備は整っており、何の心配もありません。再確認しましょう。

  1. 必ず当該国際会議固有の銀行口座を開設する。
  2. 事前参加申込者について参加者リストを作成する。
  3. 当日参加申込者についても参加者リストに相当するものを作成する。
  4. 事前参加申込者からの入金は銀行振込やクレジットカードなど入金の事実が確認できる方法による。
  5. 当日参加申込者からの入金の金額が確認できる方法を工夫する。
  6. 協賛金等については申込額と入金額の照合が行えるようにする。
    (支払い確定通知書(またはこれに類するもの)を徴し、保管する)
  7. 参加料等の徴収を業者に委託した場合には、国際会議固有の口座を開設するよう依頼し、入出金事務が終了し、口座が閉鎖された後、入出金の履歴をチェックできるようにしておく。
  8. 主要な経費については請求書を徴し、保管する。
  9. 経費については可能な限り領収証を徴し、保管する。
  10. 領収証を徴しにくいものについては出金伝票を作成する。
  11. 主要な経費の支払は銀行口座からの銀行振込を使う。
  12. 現金出納帳を作成・記帳する。
  13. 帳簿を閉める前には手許現金を全て銀行口座に振り込む。
  14. 賃金を支払った場合は、後日、給与所得の源泉徴収票を発行する。
  15. 所得税の源泉徴収を行った場合は、源泉徴収した金額を納付する。