岡田 謙一 君

2017年度功績賞受賞者の紹介

岡田 謙一 君 (おかだ けんいち)

岡田 謙一

 本会正会員岡田謙一君(フェロー)は,30年以上に渡りヒューマン・コンピュータ・インタラクションの研究に一貫して携わってこられました. 1990年頃から計算機による協調作業支援(CSCW)の研究を積極的に進められ, この分野の先駆者の一人として知られています. 1993年に世界で初めて, 会議参加者の等身大のビデオ画像を用いて視線一致を可能とする多地点遠隔会議システムMAJICの開発に成功されました. 遠隔協調作業支援における視線アウェアネスや非言語コミュニケーションの重要性を示した研究成果は高く評価されており, この分野で最も権威がある国際会議 ACM CSCW に日本人としては4人目に論文が採択されています. 非同期型協調作業支援に関しては, 電子商取引を活発にするために異種のワークフローを結ぶインターワークフローの概念を提唱され, 2つの商用ワークフロー管理システムによるインターワークフローシステムを世界で初めて開発されました. また, 遠隔コミュニケーションの臨場感における五感情報, 中でも嗅覚情報の役割に注目され, 2000年に当時極めて斬新だった嗅覚ディスプレイを開発され, 香りメディア処理の可能性を示されました. 同君はこれらの優れた研究成果により, 本会論文賞(1996年・2001年・2008年), 40周年記念論文賞, 日本VR学会サイバースペース研究賞を受賞されました.
 同君は, 関連分野の発展と学会活動の活性化に対しても多くの貢献をされました. 本会グループウェア研究グループの設立に携わられ, その後, グループウェア研究会主査(1997年~2001年)として先導されました. 他にもモバイルコンピューティング, 放送コンピューティングの各研究グループの設立に幹事として尽力されるなど, 新たな研究分野の立ち上げと後進の育成に力を注がれました. また, 本会会誌AWG編集主査(1994年~1995年), 論文誌AWG編集主査(2000年), 情報環境領域委員長(2009年~2011年), 理事(2010年度~2011年度), 監事(2015年度~2016年度)などを歴任されました. さらに, IEEE ICDCS’04, IFIP INTEACT’01, ACM CSCW’98などの国際会議の大会委員長, プログラム委員長を務めるなど, 当該学術分野の発展に大きく貢献されました.
 以上のように, 同君が, 情報処理分野ならびに本会の活動の発展に尽くされた功績はまことに顕著であります.