「Using a Virtual Machine Monitor to Slow Down CPU Speed for Embedded Time-Sensitive Software Testing
平成21年度論文賞受賞者の紹介
Using a Virtual Machine Monitor to Slow Down CPU Speed for Embedded Time-Sensitive Software Testing
[論文概要]
iPhoneなどの組込みシステムは,高い応答性を必要とするソフトウェアを動作させることが多い.組込みソフトウェアの検証は開発マシン上のシミュレーションで行われるため,時間依存性の高いソフトウェアを実時間で検証できない.本論文では,仮想機械モニタを用い,開発マシン上で組込みハードウェアと同等の速度でソフトウェアを動作させる手法を提案する.本手法は,遅い CPU 上の動作を仮想マシン上で再現するために,時計割り込み契機で細粒度の VM スケジューリングを行う.実験の結果,MPEG プレイヤのフレームデコーディングのふるまいが,遅い CPU 上の場合と同等になることが確認できた.
[推薦理由]
本論文は、ソフトウェアの実行速度を自在に変化させるための仮想マシンモニタを用いたシステムを提案している。本システムの主な用途は、時間経過に敏感に反応する組み込みソフトウェアのテストである。本研究では、仮想マシンのスケジューリングに工夫をこらしており、高精度であること、割込みを考慮していること、clock-tickを意識しているという特徴を有し、独自性と実用性が高い。また、評価結果としてMPEGプレイヤーの実行速度を変化させるものを含む多くの興味深い実験結果が示されており、信頼性も高い。文章は明快で読みやすく、説得力が高く優れた記載である。本論文は優れた論文であり、賞を受賞するにふさわしいと判断した。
吉田 哲也 君
1983 年生まれ.2005 年電気通信大学電気通信学部情報工学科卒業.2008 年慶應義塾大学大学院理工学研究科前期博士課程卒業.現在,慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程在籍.仮想マシン技術,オペレーティングシステム等のシステムソフトウェアに興味を持つ.ACM,情報処理学会各会員.
山田 浩史 君
1981 年生まれ.2004 年電気通信大学電気通信学部情報工学科卒業.2009 年慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻後期博士課程修了.現在,慶應義塾大学理工学部特別研究助教.博士(工学).平成 20 年度情報処理学会論文賞,山下記念研究賞受賞.仮想マシン技術,オペレーティングシステム等のシステムソフトウェアに興味を持つ.ACM,USENIX,情報処理学会各会員.
河野 健二 君
1993年東京大学理学部情報科学科卒業.1997 年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻博士課程中退,同専攻助手に就任.現在,慶應義塾大学理工学部情報工学科准教授.博士(理学).平成 11 年度, 20 年度情報処理学会論文賞受賞.平成12年度山下記念研究賞受賞.オペレーティングシステム,システムソフトウェア,インターネットセキュリティに興味を持つ.IEEE/CS,ACM,USENIX 各会員.