「セキュアなリモート生体認証プロトコルの提案」[情報処理学会論文誌 Vol.49, No.9, pp.3016-3027]

平成20年度論文賞受賞者の紹介

「セキュアなリモート生体認証プロトコルの提案」[情報処理学会論文誌 Vol.49, No.9, pp.3016-3027]

[論文概要]

 銀行ATMや入退管理などへの生体認証技術の普及が進み,今後はネットワークを介したリモート認証への適用が期待される.しかし指紋や静脈などの生体情報は,プライバシ情報であると同時に生涯変更できない情報であり,厳密な保護が要求される.本論文では,リモート生体認証における情報漏洩やなりすましの脅威を分析してセキュリティ要件を明確化し,これを満たすリモート生体認証プロトコルを提案した.提案プロトコルは,キャンセラブルバイオメトリクスとゼロ知識証明を組み合わせることで,サーバに対し生体情報を秘匿したまま,それが正規利用者の生体情報に十分近いことを証明する.



[推薦理由]

 生体情報を用いて利用者本人を確認することができる生体認証のATMや入退室管理などへ実用化が進む中、将来的に、インターネット決済などにおいても、リモート生体認証による本人確認が求められるようになることに着眼した先見性の高い論文である。リモート生体認証の安全性の要件を整理し、著者らの枠組みにおいて、その要件を満足する方式を、キャンセラブルバイオメトリクスとその変換値に関する知識のゼロ知識証明により構成している。構成方法がシンプルであり、理解しやすい点においても、後に続く関連研究に多くの示唆を与えるものとなっている。このように、今後の本分野の研究開発に大きく貢献する、論文賞に相応しい論文といえる。

高橋 健太 君

 1998年東京大学理学部情報科学科卒業.2000年同大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.同年(株)日立製作所入社.以来,同システム開発研究所にて生体認証技術の研究開発に従事.平成13年情報処理学会高度交通システム研究会優秀論文賞受賞.情報処理学会会員.

比良田 真史

 2002年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了.同年(株)日立製作所入社.以来,生体認証技術の研究開発に従事.

三村 昌弘

  1991年東京工業大学工学部機械物理学科卒業.1997年同大学院博士課程修了.同年(株)日立製作所入社.以来,生体認証技術の研究開発に従事.情報処理学会,電子情報通信学会各会員.工学博士.

手塚 悟

  1984年慶應義塾大学数理工学科卒業.同年(株)日立製作所入社.マイクロエレクトロニクス機器開発研究所、システム開発研究所部長を経て2009年より東京工科大学教授.平成16年度情報処理学会論文賞受賞.IEEE IIHMSP2006 Best Paper Award(2006年).情報処理学会会員.工学博士.