「10の10乗規模の個品追跡を可能とするトレーサビリティシステム向けID解決機構」[情報処理学会論文誌 Vol.49, No.3, pp.1265-1274]

平成20年度論文賞受賞者の紹介

「10の10乗規模の個品追跡を可能とするトレーサビリティシステム向けID解決機構」[情報処理学会論文誌 Vol.49, No.3, pp.1265-1274]

[論文概要]

 本研究では,著者らが提案してきた,「規模拡張可能な個品レベルのトレーサビリティシステム」に向けたID解決機構の設計と実装について,規模拡張性の評価を行った.提案システムはトレーサビリティシステムの「ID→情報」の解決機能について,個品ID解決に分散ハッシュテーブルを用い,さらに,商品カテゴリ毎の個品ID解決サービスをDNSと結合するDHT-DNSマウンタを導入した.これにより,多様な商品のIDに対して個々に適切な解決機構を提供できる大規模個品トレーサビリティシステム向け個品ID解決機構を実現し,また,達成可能な性能を確認した.



[推薦理由]

 本論文は,実用的な量的目標値として提示されている10の10乗規模の個品追跡を可能とすることを目的に,十分な規模拡張性を有するID解決機構を構築し, DHT-DNSマウンタによりID解決機構を統合することにより,適切な個品ID空間を提供できることを示している.実効性のある検証がされており,有用性が高いと判断したため,本論文を論文賞に強く推薦するものである.

土井 裕介 君

 2000年3月慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了.2000年4月より,(株)東芝研究開発センター通信プラットホームラボラトリー研究主務.自律分散システムの研究開発に従事.また,2008年4月より東京大学情報理工学系研究科博士課程に社会人学生として在籍.情報処理学会, 電子情報通信学会, ACM,各会員.

若山 史郎 君

 2003年3月慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了.2003年4月より,(株)東芝 研究開発センター 通信プラットホームラボラトリーで,ネットワーク家電,RFID応用技術,ユビキタスネットワーキング関連研究に従事.

石山 政浩 君

 1994 年横浜国立大学大学院工学研究科修士課程修了.(株)東芝 研究開発センター 通信プラットホームラボラトリー研究主務,工博.Mobile IPv4及びIPsecの実装,IPv6における移動透過保証方式の検討,IETFへの標準化提案などを行う.主にネットワークレイヤを中心としたモーバイルコンピューティングおよびセキュリティ技術の研究開発に従事.2008年度山下記念賞受賞.情報処理学会員.

尾崎 哲 君

 1995年横浜国立大学大学院工学研究科博士課程修了.(株)東芝 研究開発センター 通信プラットホームラボラトリー研究主務,工博.ユビキタスネットワーキング,ネットワーク家電,ネットワークセキュリティ関連研究開発に従事.IEEE, 電子情報通信学会会員.

井上 淳 君

 1985年東京大学工学部計数工学科卒業.(株)東芝 イノベーション推進部 経営変革上席エキスパート.インターネットプロトコル全般,特にIPv6,IPモビリティ,ネットワークセキュリティ関連の研究開発に従事.ACM,情報処理学会会員.