「駒の関係を利用した将棋の評価関数の学習」[情報処理学会論文誌 Vol.48, No.11, pp.3438-3445]
平成20年度論文賞受賞者の紹介
「駒の関係を利用した将棋の評価関数の学習」[情報処理学会論文誌 Vol.48, No.11, pp.3438-3445]
[論文概要]
将棋の評価関数として,駒(所有者,種類,位置)の2項関係を評価するモデルと,棋譜を使った自動的な調整方法を提案した.将棋の評価関数では駒の損得に加えて,駒の働きや玉の危険度など様々な評価項目が用いられる.しかしそれらの評価項目は設計が難しく,自動的な値の調整も困難であった.本稿で提案した駒の関係では,既存の評価項目の多くを表現可能であるうえに,棋譜で指された指手と指されなかった手の差分に注目した判別分析によって重みを機械的に調整することが可能である.実際に,形を評価する実験の成功と対戦での大幅な勝越により提案した評価関数の効果が示された.
[推薦理由]
近年,コンピュータ将棋はその実力を増し,情報処理技術者や将棋関係者のみならず広く世間の注目を集めている.本論文では,将棋プログラムの評価関数作成において,2項関係評価を提案し,新たに駒の関係項目の値を自動的に調整する方法の提案をおこなった.この結果,プログラマが最適な評価項目の重みを決定する必要が無くなった.また,提案手法に基づいて作成されたプログラムは,コンピュータ将棋選手権で上位のプログラムとの対戦で有意に強くなっていることを示している.以上,本論文は新規性・有用性が共に高く,論文賞に値する論文である.
金子 知適 君
1997年東京大学教養学部卒業.2002年東京大学院総合文化研究科博士課程修了.博士(学術).2002年東京大学院総合文化研究科助手.2007年助教.ACM, 情報処理学会,人工知能学会,日本ソフトウェア科学会各会員. 思考ゲーム,機械学習に興味を持つ.
田中 哲朗 君
1965年生まれ. 1987年東京大学工学部計数工学科卒業. 1992年同大学院博士課程修了. 博士(工学). 東京大学工学部助手,東京大学教育用計算機センター助教授を経て,現在は東京大学情報基盤センター准教授.情報処理学会,日本ソフトウェア科学会,ACM各会員.平成15年度情報処理学会論文賞受賞.
山口 和紀 君
1978年東京大学理学部数学科卒業.1981年東京大学理学部助手.1985年理学博士.1989年筑波大学電子情報工学系講師.1992年東京大学教養学部助教授.1999年東京大学情報基盤センター教授.2007年東京大学総合文化研究科教授.モデリング全般に興味を持つ.情報処理学会,ACM各会員.
川合 慧 君
1967年東京大学理学部物理学科卒業.1981年東京大学理学部情報科学科助教授.1984年東京大学教育用計算機センター助教授.1988年東京大学教養学部教授.1996年東京大学総合文化研究科教授.2007年放送大学教授,理学博士.研究分野 グラフィクス,プログラミング,ユーザインタフェース.情報処理学会,電子情報通信学会,ソフトウェア科学会,ACM, 各会員.