「遠隔存在感メディアとしてのアンドロイド・ロボットの可能性」[情報処理学会論文誌 Vol.48, No.12, pp.3729-3738]

平成20年度論文賞受賞者の紹介

「遠隔存在感メディアとしてのアンドロイド・ロボットの可能性」[情報処理学会論文誌 Vol.48, No.12, pp.3729-3738]

[論文概要]
 本研究では人間の存在感を伝達するために遠隔操作型アンドロイド・ロボットシステムを開発した.本システムでは非常に人に近い外見を持つアンドロイド・ロボットであるGeminoid HI-1を使用する.本システムを使用した実験の結果Geminoid HI-1を通して伝わる人間の存在感はビデオ会議システムを使用した場合の人間の存在感を上回ったことが確認された.さらに,被験者はビデオ会議システムと同程度に本システムにおいて人間らしく自然な会話ができたことが確認された.本稿ではこれらのシステムと実験について述べたあと,遠隔操作型アンドロイド・ロボットシステムによる遠隔存在感の実現についての議論を行う.

[推薦理由]
 本論文は、遠隔地間での通信における人の存在感を伝達するための手段として、遠隔操作型のアンドロイド・ロボットを提案している。実在の人物に酷似した アンドロイドの開発は極めて新規性が高い。また、アンドロイドの操作について、オペレータによる直接操作とアンドロイド自身による自動的動作の融合による手法を提案しており、提案システムの実現性を高めている。本論文では、提案システムの存在感、人らしさ、自然さ、不気味さなどについて、ビデオ通信、音声通信と比較評価しており、アンドロイド・ロボットは他のシステムに対して存在感が高いことを示している。ロボットの将来像を議論する上でインパクトが大きく、独創性と有用性を兼ね備えた論文となっている。よって本論文を論文賞に推薦する。

坂本 大介 君  2008年公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科博士後期課程修了.同年,日本学術振興会 特別研究員PD(東京大学大学院情報理工系研究科).同年よりATR知能ロボティクス研究所連携研究員.博士(システム情報科学).ヒューマンロボットインタラクション,特にロボットにおけるインタフェース,インタラクションデザインに興味を持つ.

神田 崇行 君  1998 年京都大学工学部情報工学科卒業.2000 年同大学大学院情報学研究科社会情報学専攻修士課程修了.2003 年同専攻博士課程修了.博士(情報学).現在,ATR 知能ロボティクス研究所上級研究員.ヒューマンロボットインタラクション,特にロボットの自律対話機構や社会的能力,人間型ロボットの身体を利用した対話に興味を持つ.

小野 哲雄 君  1997年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.同年ATR知能映像通信研究所客員研究員.2001年公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科助教授.2005年より同学科教授.2002年よりATR知能ロボティクス研究所非常勤客員研究員.博士(情報科学).認知情報科学,人工知能,HAIなどに興味を持つ.本学会,知能と複雑系研究会主査,山下記念研究賞等受賞.

石黒 浩 君  1991 年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程修了.工学博士.同年山梨大学工学部情報工学科助手,1992 年大阪大学基礎工学部システム工学科助手.1994 年京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻助教授.2001年,和歌山大学システム工学部情報通信システム学科教授.現在,大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻教授,ATR 知能ロボティクス研究所第二研究室客員室長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,IEEE,AAAI 各会員.

萩田 紀博 君  1978年慶応義塾大学大学院工学研究科修士課程修了後、日本電信電話公社武蔵野電気通信研究所に入所。NTT基礎研究所、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の研究部長などを経て、2001年10月より、ATRメディア情報科学研究所長、2002年10月より、ATR知能ロボティクス研究所所長兼務、現在、ATR知能ロボティクス研究所所長。工学博士。