「片方向リンクの存在するアドホックセンサネットワークにおけるTDMAスロット割当て手法」[論文誌Vol.48, No.1, pp. 342-355 (2007)]

平成19年度論文賞受賞者の紹介

「片方向リンクの存在するアドホックセンサネットワークにおけるTDMAスロット割当て手法」[論文誌Vol.48, No.1, pp. 342-355 (2007)]

[論文概要]
 無線通信方式の一つであるTDMA方式は、トラヒック量にかかわらず衝突の発生しないパケット転送が実現できるため、アドホックセンサネットワークへの適用が有効である。本論文では、筆者らがこれまでに提案した、無線通信帯域を効率的に利用するTDMAスロット割当て手法を拡張し、端末ごとの無線通信範囲が異なる環境においても、帯域利用効率を高く保つ手法を提案する。提案手法では、各端末が、隣接端末との無線リンクの方向を考慮したスロット割当てを行うことにより、割当て情報の不整合の発生を抑制する。また、シミュレーション実験を行い、提案手法の有効性を示す。

[推薦理由]
 本論文は、片方向リンクを有するアドホックネットワークにおいて、筆者らが提案するネットワーク帯域を効率的に利用するためのTDMAスロット割り当て手法ASAP-UNについて、評価により従来方式と比べてパケット衝突の発生が大幅に減少することを明確な論文構成により示している。アドホックネットワークでは個々の端末の通信性能が異なることにより片方向のリンクが生じ、その存在の元での効率的な通信プロトコルが求められてきた。特にセンサーネットワークに適用する場合は、電力消費の観点からもパケット損失の少ない通信プロトコルが重要となる。ASAP-UNはTDMAにおける効率的なスロット割り当てにより、このパケット損失を大幅に減少しており、学術的のみならず実用的にも有用性が高いと考えられる。以上の理由により本論文を論文賞に推薦する。

神崎 映光 君  2004年大阪大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了。2006年同大学院助教、現在に至る。博士(情報科学)。無線ネットワーク、通信プロトコル、分散処理に関する研究に従事。IEEE、電子情報通信学会、日本データベース学会の各会員。

原 隆浩 君  1997年大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了。2004年同大学院准教授、現在に至る。工学博士。1996年山下記念研究賞、2000年電気通信普及財団テレコムシステム技術賞、2003年研究開発奨励賞受賞。ネットワーク環境上のデータ管理技術に関する研究に従事。IEEE、ACM、電子情報通信学会、日本データベース学会各会員。

西尾 章治郎 君  1980年京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。工学博士。2002年大阪大学教授、現在に至る。2007年大阪大学理事・副学長。電子情報通信学会業績賞・論文賞、人工知能学会論文賞等を受賞。データベース、マルチメディアシステムの研究に従事。本学会および電子情報通信学会フェロー。ACM、IEEE等8学会の会員。