「位相属性を用いた多次元伝達関数設計」[論文誌Vol.46, No.10, pp.2566-2575 (2005)]
平成18年度論文賞受賞者の紹介
「位相属性を用いた多次元伝達関数設計」[論文誌Vol.46, No.10, pp.2566-2575 (2005)]
[論文概要]
ボリュームデータの視覚解析では、データの局所的な特徴だけでなく、既知の大局的な構造を手がかりに、特定の目的をもってボリュームデータを可視化することが頻繁に生じる。本論文では、より多くの情報量をもつ可視化画像を得るために、局所的および大局的な特徴を表すあわせもつ位相属性に着目し、それらを変数に加えた多次元伝達関数の設計法を提案した。これにより、ボリュームデータに内在する等値面の入れ子関係、位相変化の軌道距離、位相の型変化といった、位相構造を強調した可視化結果を得ることが可能となった。また、具体的なシミュレーションデータに適用することにより、本手法の有効性を示した。
[推薦理由]
本論文は、観察者の目的に応じたボリューム可視化を実現するために、位相属性を導入した多次元伝達関数の設計手法を提案したものである。提案手法は、局所特徴を可視化する従来手法とは異なり、ボリュームデータのレベルセットグラフから位相属性を計算することで、ボリュームデータにおける等値面の入れ子構造や、位相変化の構造、位相の型変化などの大局的な構造を可視化できるという点で、新規性がある。また本論文は、位相属性を用いた多次元伝達関数の具体例をシミュレーションデータに適用することで、提案手法の有用性を示している。提案手法は新規性と有用性が高く、今後の発展も期待できることから、本論文を論文賞に推薦する。
竹島 由里子 君 1999年お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。博士(理学)。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科助手、東北大学流体科学研究所助手、日本原子力研究博士研究員等を経て、現在、東北大学流体科学研究所助教。ボリュームビジュアリゼーションに関する研究に従事。IEEE CS、ACM、情報処理学会、可視化情報学会各会員。
高橋 成雄 君 1997年東京大学理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。群馬大学工学部、。同大学総合情報処理センター、東京大学大学院総合文化研究科を経て、現在、同大学大学院新領域創成科学研究科准教授。可視化、視覚応用システムに関する研究に従事。電子情報通信学会和文論文誌 (A) 編集委員、IEEE CS、ACM、Eurographics、情報処理学会、可視化情報学会、日本視覚学会各会員。
藤代 一成 君 1985年筑波大学大学院工学研究科修士号取得退学。理学博士(東京大学)。東京大学、筑波大学、お茶の水女子大学を経て、2004年より東北大学流体科学研究所教授、現在に至る。コンピュータ可視化全般に関する研究に従事。画像電子学会副会長、可視化情報学会理事、情報処理学会、VR学会、計算工学会、機械学会、IEEE CS、ACM、Eurographics各会員。