「軽量仮想計算機モニタを用いたOSデバッグ方式の提案」 [論文誌Vol.46, No.7, pp. 1735-1751 (2005)]

平成17年度論文賞受賞者の紹介

「軽量仮想計算機モニタを用いたOSデバッグ方式の提案」 [論文誌Vol.46, No.7, pp. 1735-1751 (2005)]

[論文概要]
 従来,PC/AT互換機向けのOSデバッグ環境は,デバッグ時の安定稼動の保証,様々なOSやI/Oデバイスへの低開発工数での対応,デバッグ時の高速なI/O実行,の3つの課題を同時に解決することができなかった.本論文で提案するOSデバッグ方式は,リモートデバッグ機能を備えた軽量仮想計算機モニタ上でデバッグ対象OSを動作させることで,上記同時解決を可能にした.本軽量仮想計算機モニタを新規に実装し,そのモニタ上でデバッグ対象OSを動作させてI/O性能を評価した.その結果,従来モニタ上で動作させた場合と比べて5.4倍の性能向上が可能であることがわかった.

[推薦理由]
 本論文は,軽量な仮想計算機モニタを用いたOSデバッグ方式を提案している.提案方式は,従来実現が困難と思われていたデバッグ環境の安定性とデバッグ時のI/O性能の高速化の両立を実現するため,仮想化するハードウェア資源の絞り込み,デバッグ対象OSの一部コード改変,OSからのI/Oデバイスの直接アクセス方式,軽量なメモリ領域保護機能の実現など,様々な工夫を取り入れている.以上の工夫により,提案方式が,市販のPC仮想化ソフト上で動作させた場合と比べ5倍以上のI/O性能を達成可能なことなど,優れた実験結果を示しており,本分野におけるインパクトは大きいと考えられる.以上の理由により,本論文を論文賞に推薦する.

竹内 理 君 昭和44年生.平成4年東京大学理学部情報科学科卒業.平成6年同大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.同年(株)日立製作所システム開発研究所入社.連続メディア処理向きマイクロカーネルの研究,特にリアルタイムスケジューラ,リアルタイム通信プロトコル,異種OS共存技術,ストリームサーバ構築技術,OSデバッグ方式などの研究に従事.