「電子透かし検出に適した誤り訂正符号の拡張方式」(Vol.45,No.8)

平成16年度論文賞受賞者の紹介

「電子透かし検出に適した誤り訂正符号の拡張方式」(Vol.45,No.8)

[論文概要]
 コンテンツに埋め込まれた透かし情報は微弱である上,様々なメディア処理が加えられるため,その検出では誤りが生じやすく,かつ,軟判定復号法の前提となる信頼度を正確に算出できない場合が多い.そこで本論文では,誤り訂正を繰り返したとき,同一情報を復号できる回数に規則性が表れることに着目して,信頼度の代わりにこの規則性を活用する新しい誤り訂正方式を提案した.提案方式によって復号誤りを防止できることを理論的に明らかにし,さらに,実際のサンプル画像にJPEG圧縮を施して透かし情報の検出実験を行うことで,提案方式の有効性を実証した.

[推薦理由]
 本論文は、ディジタルコンテンツの電子透かし情報に適用可能な誤り訂正符号の新規提案である。一般に、ディジタルコンテンツに対する圧縮等の変換処理に対応するため、電子透かしには誤り訂正符号が用いられるが、埋め込むビット数の制約から変換後に透かし情報を復号できないという課題があった。これに対し、本論文では軟判定復号法に着眼し、ディジタルコンテンツの電子透かしに適合するよう独自に拡張するとともに、JPEG画像にて実測することにより、BCH符号など既存の誤り訂正符号よりも約40%もの検証能力を向上できる新たな方式を提案した。このように、軟判定復号法を電子すかしへ適用する方式の独自性、実測による有効性の立証、その波及効果、いずれの側面からも極めてレベルが高く、論文としての完成度も高いので論文賞に推薦する。

藤井 康広君 2001年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了(物理学).同年日立製作所入社.現在,システム開発研究所第7部(セキュリティシステム研究部)研究員.情報セキュリティ技術,著作権保護技術,電子透かしおよび符号理論の研究開発に従事.博士(理学).情報処理学会,電子情報通信学会各会員.

越前 功君 1997年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了(応用物理学).同年日立製作所入社,システム開発研究所配属.情報セキュリティ技術,著作権保護技術,および電子透かし技術の研究開発を担当.現在,同研究所第7部(セキュリティシステム研究部)研究員.博士(工学).情報処理学会,電子情報通信学会,映像情報メディア学会,IEEE各会員.

山田 隆亮君 1988年京都大学工学部資源工学科卒業.同年日立製作所に入社.大森ソフトウェア工場を経て,現在,システム開発研究所第7部(セキュリティシステム研究部)主任研究員.マルチメディア応用,コンテンツ流通システムの研究に従事.情報処理学会会員.

手塚 悟君 1984年慶應義塾大学工学部数理工学科卒業.同年日立製作所入社,マイクロエレクトロニクス機器開発研究所を経て,現在,システム開発研究所第7部(セキュリティシステム研究部)部長.オペレーティングシステム,デバイスドライバ,LANシステムの研究を経て,現在,セキュリティシステム,特に電子認証の研究開発に従事.工学博士.情報処理学会会員.

吉浦 裕君 1981年東京大学理学部情報科学科卒業.同年日立製作所入社.日立研究所,システム開発研究所勤務.2003年より電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科助教授.自然言語処理,知識処理の研究を経て,現在,情報セキュリティ,著作権保護の研究に従事.理学博士.情報処理学会,電子情報通信学会,人工知能学会,IEEE各会員.