「SDIモデルに基づく局所同期型非同期式VLSI設計方式」(Vol.44、No.5)
平成15年度論文賞受賞者の紹介
「SDIモデルに基づく局所同期型非同期式VLSI設計方式」(Vol.44、No.5)
[論文概要]
本論文では,非同期式VLSIシステムの一設計方式として,遅延情報を利用するSDIモデルに基づき,要求-応答プロトコルに従って生成されたローカルタイミング信号を利用する設計方式を提案する.本設計方式では,セルフリセット構造を持つローカルタイミング信号生成回路を利用して要求-応答オーバーヘッドの小さい回路を実現し,入力データに依存して処理遅延が大きく変動する場合,繰り返し実行されるレジスタ間データ転送処理遅延の平均値で性能を評価することができ,高速化を実現できる.また,タイミング信号のみ非同期で実装する設計方式であり,従来の非同期式設計手法と比較して設計が容易である.
[推薦理由]
本論文は、SDIモデルに基づく局所同期型の非同期式VLSIの設計法を提案している。局所同期型の非同期式VLSIは、要求-応答プロトコルにより実現したタイミング信号に同期してデータパスを行うので、システム全体を同期式システムとして設計可能であり、同期式システムの設計者が従来の同期式システム設計支援ツールを利用して非同期式システムの設計を容易に行うことが出来るという点で、極めて有用な設計法である。本設計法は、要求-応答のプロトコルのオーバヘッドが小さく抑えられ、高速化も容易なGasp回路を、SDIモデル向けに発展させており、高速な非同期式システムの設計実現性も示唆している。以上のように、本論文の成果は、非同期式システムの応用範囲を拡大することに大きく貢献するものと思われるので論文賞に推薦する。
今井 雅君 1996年東京工業大学工学部電気電子工学科卒業.1997年同大学院情報理工学研究科計算工学専攻修士課程修了.2000年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学博士後期課程単位取得退学.2000年東京大学先端科学技術研究センター助手.工学博士.非同期式VLSIシステムの設計方式及び設計支援環境の構築に関する研究に従事.
Metahan Ozcan君 1993年トルコBilkent大学工学部情報工学科卒業.1996年東京工業大学大学院工学系研究科電気・電子工学専攻修士課程修了.1999年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学博士後期課程単位取得退学.1999年東京大学先端科学技術研究センター学術研究支援員.工学博士.
南谷 崇君 1969年東京大学工学部計数工学科卒業.1971年同大学院修士課程修了.日本電気(株)中央研究所勤務を経て,1981年東京工業大学情報工学科助教授,1989 年同電気電子工学科教授.1995年東京大学計数工学科教授.1996年東京大学先端科学技術研究センター教授.工学博士.IEEE Fellow,電子情報通信学会フェロー.1987年電子情報通信学会論文賞,1994年大川出版賞