「異分野データベース群を対象とした意味的検索空間統合方式とその実現」(Vol.43,No.SIG5(TOD14))
平成14年度論文賞受賞者の紹介
「異分野データベース群を対象とした意味的検索空間統合方式とその実現」(Vol.43,No.SIG5(TOD14))
[論文概要]
本論文は,異分野データベース群を対象とした意味的検索空間生成のための空間統合方式を提案している.提案方式は,異分野間の共通概念を用いて,独立に構築された異分野の多次元ベクトル空間群を統合し,分野横断的な意味解釈を伴った検索空間を実現する.この方式により,独立に構築された複数分野の多次元ベクトル空間群について,それらの分野に横断的に関連する情報源に対して高い相関を与える意味的検索空間を生成することが可能になる.本論文は,システムの実現方法を示し,環境分野および医療分野を対象とした意味的検索空間統合の実現および実験により,提案方式の有効性を明らかしにている.
[推薦理由]
本論文では、現在広域ネットワーク上に独立に構築されている異分野の多次元ベクトル空間を統合し、分野横断的な意味的連想検索空間を構成するユニークな方式を提案している。本論文は、環境分野及び医療分野を対象としたシステムの実現と評価を行ない、提案した方式の有効性を示した完成度の高い独創性に富んでいる研究である。提案した方式では、分野という概念を柔軟かつダイナミックに捉え直し、新たな発想や知識を生み出すための基礎を与えている。この方式により、異分野に横断的に関連する情報源に、より高い相関を与える多次元ベクトル空間を生成することが可能になり、データベース統合のための新しい機構の実現可能性を示した。本研究は、今後データベースとネットワークの研究に画期的な貢献を果たすものと考えられる。
石原 冴子君 1996年慶應義塾大学文学部入学、2000年慶應義塾大学文学部図書館・情報学科卒業。2000年慶應義塾大学SFC、政策・メディア研究科修士課程入学、2002年同課程修了。データベース設計、データベースシステム、感性データベースの研究に従事。(現在、日本オラクル株式会社に在籍。)
清木 康君 1978年慶應義塾大学工学部卒業.1983年同大学院工学研究科博士課程修了,工学博士.同年,日本電信電話公社武蔵野電気通信研究所入所.1984~1996年筑波大学電子・情報工学系講師,助教授を経て,1996年慶應義塾大学環境情報学部助教授,1998年~現在,同大学教授. 1990年4月~1991年2月:カリフォルニア大学アーバイン校,テキサス大学オースティン校にて客員研究員. 意味的連想検索,マルチメディアデータベースシステム,感性データベースの研究に従事.1999年~現在,情報処理学会データベースシステム研究会主査.