「ワイヤーフレームモデルからの曲面モデルの構成法」(Vol.42,No.5)
平成13年度論文賞受賞者の紹介
「ワイヤーフレームモデルからの曲面モデルの構成法」(Vol.42,No.5)
[論文概要]
ワイヤーフレームモデルは入力や変更が容易であり、そのため複雑な曲面・立体形状の入力手段としてよく使われる。本論文は、線情報だけのワイヤーフレームを面分の集合として解釈し、合理的でなるべく単純な曲面モデルを効率よく生成する方法を提案した.対象とするワイヤーフレームは2連結な平面マルチグラフで,球面と同相な閉曲面として複数の位相的解釈が可能である.そこで,最初にすべての解(面ループの集合)を,グラフの3連結要素分解を用いて組み合わせ的に生成する.次にすべての面分を幾何的に決定して,それに基づく評価・比較によって解の絞り込みを行なう.閉曲面だけでなく,円板と同相な開いた曲面モデルにも適用可能である.
[推薦理由]
工業製品などを扱うCADにおいて,複雑な形状をいかに簡単に定義し操作するかは永年のテーマである.一つの方法としてワイヤーフレームで稜線を定義するやり方があるが,そのためにはワイヤーフレーム中には存在しない曲面の情報(面分がどこにあるか,どんな曲面か)を補わなければならない.この作業は現在は後工程として人手により行なわれているが,本論文は,それを自動化するための核となる技術を提案している.手法の特徴は,位相情報と幾何情報の扱いの峻別である.グラフ埋め込みの理論を用い,全体を2次元多様体として解釈するすべての可能性を尽くすことにより,従来手法で問題だった入力ワイヤーの幾何的誤差の影響を排除することに成功している.また,理論と実験により手法の効率のよさも示されている.本論文は,形状入力技術の多様な発展に資するものであり,高く評価できる.
井上 恵介君 1987年東京大学工学部精密機械工学科卒業.1989年同大学院精密機械工学専攻修士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム(株)入社.以来,現在まで東京基礎研究所にて幾何モデリング,CAE関連技術の研究開発に従事.1999年カーネギーメロン大学客員研究員.
嶋田 憲司君 1983年東京大学工学部精密機械工学科卒業.1985年同大学院精密機械工学専攻修士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム(株)入社,東京基礎研究所にて形状処理,ロボティクス,コンピュータグラフィックス,計算力学などの研究に従事. 1989年より1993年までマサチューセッツ工科大学博士課程.Ph.D. 1996年よりカーネギーメロン大学機械工学科とロボット研究所の助教授を兼任.1994年本会山下記念研究賞,同年NICOGRAPH論文コンテスト優秀論文賞,2000年米国立科学財団(NSF) CAREER AWARD受賞.ACM, ASME, IEEE, SIAM各会員.