嵩 忠雄 君
2006年度(平成18年度)顕功賞受賞者の紹介
嵩 忠雄 君 (かさみ ただお)
嵩忠雄君は,永年にわたり教育,研究ならびに後進の育成に情熱を傾け,内外の符号理論,形式言語理論,計算理論の分野の発展に大きく寄与するとともに,学界ならびに産業界に多くの優れた人材を送り出され ました.
符号理論とその応用では長年にわたり世界における主導的役割を果たしてこられました.また,形式文法の多項式時間認識アルゴリズムに関して先駆的業績をあげるとともに,プログラム理論,ペトリネット理論,並行プロセスの理論,関係データベースの設計理論,ソフトウェアの仕様記述法と形式的検証法,暗号を含んだプロトコルの安全性問題等の広い分野において多大な貢献をされました.符号理論では,符号の重み分布を始めとする符号の構造に関する業績が特によく知られており,世界的に著名な教科書にも,多数紹介されています.嵩系列と呼ばれる 相互相関の小さい系列集合は国際標準規格IMT-2000のW- CDMAのスクランブル符号の1つとして採用されました.言語理論においては,時間計算量3乗オーダの文脈自由言語認識アルゴリズム(CYKアルゴリズムと総称)を世界に先駆けて発表され, 30余年後もRNA系列の解析に応用されています.これらの業績に対してIEEEからシャノン賞(情報理論の最高の賞)がアジアで初めて授与されました.また,2003年度には,大川賞,高柳記念賞も授与されました.また,同君は大阪大学,奈良先端科学技術大学院大学,広島市立大学において,卓越した見識をもって,その運営にあたり ました.特に,阪大基礎工学部長,奈良先端大情報科学研究科長,同附属図書館長として,長期的視野に立ち,重要な事柄に貢献されました.その1つに,奈良先端大における日本の研究機関初の電子図書館 設立運営に尽力したことがあります.
以上のように,同君が教育界,学界および産業界に果たした功績は誠に顕著であります.嵩忠雄君の生前の目覚ましい業績に対し,顕功賞を贈呈し,永く表彰いたします.
1958年3月 大阪大学工学部通信工学科卒業
1963年3月 大阪大学大学院工学研究科博士課程(通信工 学専攻)修了.工学博士.
1963年4月 大阪大学工学部 助手
1963年7月 同大学工学部 助教授
1966年4月 同大学基礎工学部 教授
1990年4月 同大学基礎工学部 学部長
1992年4月 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究 科・教授
1992年4月 同大学情報科学研究科・研究科長
1994年4月 同大学附属図書館長
1998年3月 同大学停年退官
1998年4月 広島市立大学教授
2003年3月 同大学停年退職
2007年3月 逝去
1987年 電子情報通信学会 業績賞
1999年 IEEE情報理論ソサィエティ Claude E. Shannon Award(シャノン賞)
2003年 財団法人大川情報通信基金 大川賞
2003年 財団法人高柳記念電子科学技術振興財団 高柳記念賞
本会関係略歴
1972年4月入会