「動画像シミュレータを介した強化学習による細胞追跡手法」

2024年度論文賞受賞者の紹介

動画像シミュレータを介した強化学習による細胞追跡手法

[情報処理学会論文誌数理モデル化と応用 Vol.16 No.2, pp.11-22]

[論文概要]

近年,生細胞の動態を時系列的に記録した動画像の取得が可能となり,細胞追跡は生命動態の理解に重要な解析工程となりつつある.しかし細胞動画像は観測対象や撮影技術の違いに依存して様々な性質を示すことから,機械学習に十分な量のデータを用意することが難しい.本研究では,深層学習を用いて細胞動画像の外観を模したシミュレータを環境として構築し,強化学習によりビデオゲームを攻略するかのごとく細胞追跡エージェントを訓練する手法を提案した.これにより多様な学習データの生成と追跡戦略の獲得が可能であることを示した.

[受賞理由]

実データの画像解析において,如何に少ないデータから有効な情報を取り出すかということが重要になるが,本論文はシミュレータを有効活用した強化学習を用いることで,この問題を打破している.特に機械学習の実データへの応用という観点でおいて,数理モデル化とその応用を見据えた研究として論文賞としてふさわしいものであると評価できる.

長村 徹 君

2024年大阪大学大学院情報科学研究科修了.博士(情報科学).現在は画像処理と強化学習の研究に従事.

瀬尾 茂人 君

2006年大阪大学大学院情報科学研究科修了.博士(情報科学).同年同研究科助手.2007年助教.2017 年より大阪大学大学院情報科学研究科准教授.情報処理学会,日本バイオインフォマティクス学会各会員.バイオインフォマティクスや細胞画像処理の研究に従事.

藤本 健二 君

2023年大阪大学大学院情報科学研究科修了.博士 (情報科学).同年弘前大学大学院医学研究科特任助教.2025年弘前大学大学院理工学研究科助教.情報処理学会,日本バイオインフォマティクス学会各会員.細胞画像情報学,バイオメディカル情報学の研究に従事.

繁田 浩功 君

大阪大学大学院情報科学研究科助教.2016年大阪大学大学院情報科学研究科修了.博士(情報科学). 2015年10月より大阪大学サイバーメディアセンター特任研究員.2016年大阪大学大学院情報科学研究科特任研究員.2017年大阪大学大学院情報科学研究科特任助教.2019年より現職.情報処理学会,バーチャルリアリティ学会,ACM各会員.

松田 秀雄 君

1987 年神戸大学大学院自然科学研究科修了(学術博士).同年同大学工学部助手.1994 年大阪大学基礎工学部助教授.2002 年大阪大学大学院情報科学研究科教授.2025年大阪大学名誉教授.バイオインフォマティクスの研究に従事.日本バイオインフォマティクス学会,ISCB,ACM 各会員.