「速さと正確さへの主観的なバイアスがポインティング手法評価の一般化可能性に与える影響」

2024年度論文賞受賞者の紹介

速さと正確さへの主観的なバイアスがポインティング手法評価の一般化可能性に与える影響

[情報処理学会論文誌 Vol.65 No.2, pp.383-395]

[論文概要]

新しいポインティング手法の評価実験において,速さと正確さのバランスが参加者ごとに異なることで,結論に影響を与える可能性がある.本稿では,速さ重視,ニュートラル,正確さ重視の3つの主観的バイアスが,Bubble CursorとBayesian Touch Criterionの評価に与える影響を検証した.結果,Bubble Cursorは全バイアス条件でベースライン手法を上回ったが,Bayesian Touch Criterionは単純な手法を下回る結果となった.本稿では,複数のバイアスを調査することが手法の特性を正確に議論するために重要であると提言する.

[受賞理由]

本論文は,ポインティング手法を評価するときに速さと正確さのバランスは参加者ごとに異なる可能性がある点に着目し,3つの主観的バイアス(速さ重視,ニュートラル,正確さ重視)が評価結果に与える影響を検証した点で興味深い研究である.主観的バイアスは,ポインティング手法に限らず入力インタフェースシステムの開発・評価にも影響を与えるものであり,本研究は幅広い展開が望める一般化可能性の高い基礎的かつ堅実で価値が高い研究である.論文としも新規性も有用性もともに高く,論文賞に値する.

木下 大樹 君

2021年度明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科卒業.2023年度明治大学大学院先端数理科学研究科先端メディアサイエンス専攻にて博士前期課程(理学)を修了.

大塲 洋介 君

2021年度明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科卒業.2023年度明治大学大学院先端数理科学研究科先端メディアサイエンス専攻にて博士前期課程(理学)を修了.

富張 瑠斗 君

2021年度明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科卒業.2023年度明治大学大学院先端数理科学研究科先端メディアサイエンス専攻にて博士前期課程(理学)を修了.

山中 祥太 君

LINEヤフー株式会社 DS統括本部 LINEヤフー研究所 上席研究員.2016年に明治大学大学院にて博士号を取得(工学).2017年にヤフー株式会社(現在,LINEヤフー株式会社)に入社.2022年よりHuman-Computer Interactionチームリーダー,現在に至る.

宮下 芳明 君

明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科教授・学科長.北陸先端科学技術大学院大学にて博士(知識科学)取得.情報処理学会インタラクション2012 PC委員長、インタラクション2017大会委員長.2022年度 情報環境領域 功績賞.著書に「コンテンツは民主化をめざす—表現のためのメディア技術」「13歳から挑むフロンティア思考」など.2023年イグ・ノーベル賞を受賞.