2020年度業績賞

2020年度業績賞の表彰

◆クラウド型多言語対応音声認識システム「Watson Speech-to-Text」の研究開発と実用化

 [推薦理由] 

貢献者らは,クラウド型多言語対応音声認識システム「Watson Speech-to-Text」(Watson STT)の研究開発,およびそれを利用した音声認識ソリューションの開発,実運用システムへの導入を行った.貢献者らの業績は,システムの日本語対応ではなく,全言語共通のモデル学習・カスタマイゼーションアルゴリズムの発明,および英語,日本語を含むほぼすべてのモデル開発にある.ハイブリッドクラウド・エコシステムを通じて,Watson STTを利用したコールセンターでのエージェント支援システム,会議議事録作成システム,教育現場での教員支援システムなどが国内外で多数導入されており,業績賞にふさわしいと判断する.

kurata 倉田 岳人 君(正会員)
2004年東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム株式会社入社.以来,同社東京基礎研究所にて,音声言語情報処理の研究に従事.2013年東京大学より博士号取得.2016年より音声グループ担当マネージャーとして,音声認識の基礎研究,および国内外事業部門との協業を推進.2018年日本音響学会技術開発賞受賞.IEEE SLTCメンバー.IEEE,情報処理学会各シニア会員.博士(情報理工学).
 
長野 長野 徹 君(正会員)
1998年筑波大学大学院工学研究科修士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム株式会社入社.以来,同社東京基礎研究所にて,自然言語処理および音声合成・音声認識の研究に従事.2016年筑波大学大学院システム情報工学研究科博士課程修了.2018年日本音響学会技術開発賞受賞.情報処理学会シニア会員,日本音響学会会員.博士(工学).
 
伊東 伊東 伸泰 君(正会員)

1984年大阪大学基礎工学研究科博士前期課程修了. 同年日本アイ・ビー・エム株式会社入社. 以来, 同社東京基礎研究所にて, 文字認識,自然言語処理, 音声認識の研究に従事. 1999年, および2018年日本音響学会技術開発賞受賞.
 

鈴木 鈴木 雅之 君
2013年東京大学大学院工学系研究科博士後期課程終了.同年日本アイ・ビー・エム株式会社に入社.以来,音声認識や自然言語処理の研究開発等に従事.2012年日本音響学会粟屋潔学術奨励賞,2018年日本音響学会技術開発賞など受賞.IEEE,電子情報通信学会会員.博士(工学).
 
福田 福田 隆 君(正会員)
2005年日本アイ・ビー・エム株式会社入社.以来,東京基礎研究所にて音声言語情報処理の研究に従事.特に,音声認識の基礎技術およびビジネスへの応用技術についての研究に長く携わる.2010年日本音響学会粟屋潔学術奨励賞,2012年電子情報通信学会音声研究会研究奨励賞,2013年情報処理学会山下記念研究賞,2018年日本音響学会技術開発賞など受賞.IEEE,電子情報通信学会,情報処理学会各シニア会員.博士(工学).

◆熟練者ノウハウを反映可能な計画最適化技術の研究開発と実用化

[推薦理由]

生産計画等の立案業務は属人的な業務であり,労働人口の減少,豊富なノウハウを有する熟練者の引退等により,計画立案業務の自動化が急務となっている.今回,機械学習技術を計画最適化技術に組み込むという,新しい手法の研究開発に取り組み,熟練者ノウハウを反映した計画を自動立案するシステムの実用化に成功した.本技術は,計画立案業務を人手に頼っていた複数の生産現場で活用されている,働き方改革に向けた労働時間低減等の社会課題を解決した先駆的な取り組みであり,業績賞にふさわしいものと判断する.
 
小林 雄一 君(正会員)
1999年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了.同年株式会社日立製作所入社.産業向け自律分散システムやトレーサビリティシステムなどの研究開発を経て,現在.計画最適化技術に関する研究開発に従事.主に機械学習技術と最適化技術とを組み合わせた新しい計画最適化の研究開発を担当.2008年大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻博士課程修了.情報処理学会正会員.博士(情報科学).
鄭 鄭 建 君
2014年名古屋工業大学大学院創成シミュレーション工学専攻博士後期課程修了.博士(工学)取得.同年株式会社日立製作所入社.エレベーターの予兆診断などの研究開発を経て,現在.機械学習や最適化技術を用いて,生産計画・スケジューリング問題の自動化・最適化の研究開発に従事.IEEE ITSなどのジャーナル査読を担当. 
高橋 高橋 由泰 君(正会員)
2003年東京大学大学院工学系研究科 電子情報工学専攻博士課程修了.同年株式会社日立製作所入社.コンテンツセキュリティなどの研究開発を経て,現在.同社研究開発グループにて鉄道,水道,産業等,社会インフラ向けの計画最適化技術に関する研究開発に従事.情報処理学会,日本オペレーションズ・リサーチ学会各会員.博士(工学). 
柳田 柳田 貴志 君
2000年青山学院大学理工学研究科電気電子工学専攻修士課程修了.同年株式会社日立製作所入社.主にインダストリ-分野のシステム構築に従事.現在はAIを活用した計画最適化サービスを始めとするDX事業を担当. 
佐藤 佐藤 達広 君
1995年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.同年株式会社日立製作所入社.鉄道や水道等の社会インフラを対象とした計画最適化技術の研究開発を経て,現在データサイエンスの専門職としてAIを活用した顧客課題の解決支援から社内の技術力強化・人財育成などに幅広く従事.2012年早稲田大学大学院情報生産システム研究科情報生産システム工学専攻博士課程修了.博士(工学).電気学会上級会員,日本オペレーションズリサーチ学会員.2015年電気学会第71回電気学術振興賞論文賞受賞. 

◆新規アーキテクチャに基づくベクトル型コンピュータの開発とその AI への応用

[推薦理由]

受賞者らは新規アーキテクチャに基づくベクトル型コンピュータ SX-Aurora TSUBASAを開発した。本アーキテクチャではベクトルプロセッサをPCIeカード上に実装し,x86プロセッサと協調動作することで,高い性能と使いやすさを両立させた。また,本アーキテクチャを対象とした機械学習フレームワークの研究開発を行い,AI領域にその適用範囲を拡大した。これにより,機械学習に長時間かかるという課題を解決し,大きな価値を生んでいる。以上により多数の大規模システムユーザを含め,100以上のユーザに採用されるに至っており,業績賞にふさわしいと判断する.

荒木 荒木 拓也 君(正会員)
1999年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了. 博士(工学). 同年日本電気(株)入社. 2003-2004年米Argonne National Laboratory客員研究員. 現在データサイエンス研究所主幹研究員. プログラミング言語,並列分散処理,大規模データ分析,データベース,HPCのAI/機械学習への応用等の研究に従事. 情報処理学会理事(2017年度-2018年度).  
 
石坂 石坂 一久 君(正会員)
2004年早稲田大学大学院博士課程了. 博士(工学). 2005年日本電気(株)入社. 以来,並列コンピューティングの研究に従事. 現在,同社データサイエンス研究所主任研究員.  

 
今井 今井 照之 君(正会員)
2007年東京大学情報理工学系研究科修士課程修了. 同年日本電気(株)入社. ストレージ用オペレーティングシステムの開発,ベクトルスーパーコンピュータのI/O,SX-Aurora TSUBASAのアーキテクチャ,オペレーティングシステム開発に従事. 現在SX-Aurora TSUBASAのソフトウェアの開発に従事.  
星 星 宗王 君
1996年名古屋大学大学院電気系専攻修了. 同年日本電気(株)入社. 並列処理アーキテクチャ,ベクトルプロセッサの研究開発に従事し,地球シミュレータ(初代),SX-ACE,SX-Aurora TSUBASAの開発を担当する. 現在,同社スマートインダストリー本部長代理.  
 
愛野 愛野 茂幸 君
1986年東京大学学士課程修了. 同年日本電気(株)入社. 1991年University of NewCastle Upon Tyne(英)修士課程修了. 現在,システムプラットフォームビジネスユニット主席技師長(CTO).