「多次元ストリーミング時系列データの効率的なモチーフモニタリングアルゴリズム」

2020年度論文賞受賞者の紹介

多次元ストリーミング時系列データの効率的なモチーフモニタリングアルゴリズム

[情報処理学会論文誌 Vol.61 No.9, pp.1567-1576]
[論文概要]

 近年,多くのIoT機器は多次元ストリーミング時系列データを生成しており,それらを分析することに注目が集まっている.時系列データを分析する最も重要な技術として,時系列データの中に最も多く現れるサブシーケンスであるレンジモチーフがある.本論文では,多次元ストリーミング時系列データに対してレンジモチーフをモニタリングする問題に取り組む.効率的にレンジモチーフをモニタリングするために、サブシーケンスをクラスタに分割し,三角不等式を用いることで不必要な距離計算の回数を削減する.4つの実データを用いた実験により,提案アルゴリズムの有効性を確認する.

[受賞理由]

 本論文では,多次元ストリーミング時系列データに対してレンジモチーフをモニ タリングする新たな問題に着目し,効率的にレンジモチーフをモニタリングする アルゴリズムMMM(Multi-dimensional Motif Monitoring)を提案している.MMM では,サブシーケンスをクラスタに分割し,三角不等式を用いることで不必要な 距離計算の回数を削減する.4種類の実データを用いたベースラインアルゴリズ ムとの比較によりその有効性を示しており,論文の完成度も高く,今後の発展性 も期待できる.以上より,論文賞にふさわしいものと判断してここに推薦する.

加藤 慎也 君

2018年大阪大学工学部電子情報工学科卒業.2020年同大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了.同年4月株式会社NTTデータに入社.現在, オープンソースの関係データベース管理システムであるPostgreSQLの開発業務に従事.

天方 大地 君

2012年大阪大学工学部電子情報工学科卒業.2014年同大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了.2015年同大学院情報科学研究科博士後期課程修了後,同年同大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻助教となり,現在に至る.情報科学博士.データベース,ネットワーク環境におけるデータ検索技術に関する研究に従事.

原 隆浩 君

1995年大阪大学工学部情報システム工学科卒業.1997年同大学大学院工学研究科博士前期課程修了.同年同大学院工学研究科博士後期課程中退後,同大学院工学研究科助手,2004年同大学院情報科学研究科准教授.2015年より同大学院情報科学研究科教授となり,現在に至る.工学博士.ネットワーク環境におけるデータ管理技術に関する研究に従事.