「鏡像スピーカを用いたスマートフォン高精度3次元測位手法」

2020年度論文賞受賞者の紹介

鏡像スピーカを用いたスマートフォン高精度3次元測位手法

[情報処理学会論文誌 Vol.60 No.12, pp.2314-2324]
[論文概要]

 本稿では,スピーカ2台から送信される音響信号の直接波と反射波を用いたスマートフォンのための新たな高精度3次元測位手法について述べる.壁と床からの1次反射波を,壁と床に対するスピーカの鏡像体からの信号ととらえる,鏡像スピーカの概念を提案する.また,2つの搭載マイクロフォンを利用し実在および鏡像スピーカからの信号を特定する.評価実験にて90th-percentileでの測位誤差が37.7 mm,最大偶然誤差が5.22 mm未満であることを確認した.さらに,Dilution of Precisionやシミュレーションを用い,鏡像スピーカの有用性を明らかにした.

[受賞理由]

 スピーカ2台から送信される音響信号の直接波と反射波を用いたスマートフォン のための新たな高精度3次元測位手法において,壁と床からの1 次反射波を,壁 と床に対するスピーカの鏡像体からの信号ととらえる,鏡像スピーカの概念を新 たに提案している.特別な機材を使用せずに室内位置を認識する手法は実用性が 高く,様々な環境における評価実験によって高い精度で測位できることを示して いる.提案手法の新規性,有用性が高く,論文の完成度も高いため,論文賞にふ さわしいものと判断してここに推薦する.

村上 弘晃 君

2016年北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科卒業.2021年同大学大学院情報科学研究科情報理工学専攻博士課程修了.博士(情報科学).2021年より東京大学特任研究員となり,現在に至る.

中村 将成 君

2014年北海道大学工学部情報エレクトロニクス学科卒業.2016年北海道大学大学院情報科学研究科情報理工学専攻修士課程修了.2018年北海道大学大学院情報科学研究科情報理工学専攻博士課程修了.博士(情報科学).2016年三菱電機株式会社情報技術総合研究所研究員.2020年より北海道大学助教となり,現在に至る.

橋爪 宏達 君

1984年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.同年東京大学助手(文献情報センター).1986年学術情報センター助教授.1989年〜1990年ぺンシルバニア大学客員助教授.1990年文部省学術調査官(併任).1998年学術情報センター教授.2000年国立情報学研究所教授.2002年より総合研究大学院大学教授を併任し,現在に至る.

杉本 雅則 君

1990年東京大学工学部航空学科卒業.1995年同大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).同年学術情報センター(現,国立情報学研究所)助手.1999年東京大学助教授.2012 年より北海道大学教授となり,現在に至る.