「鉱山用重機間通信による周辺重機検出手法の提案」
2017年度論文賞受賞者の紹介
鉱山用重機間通信による周辺重機検出手法の提案
[情報処理学会論文誌 Vol.58 No.1, pp.68-78]
[論文概要]
露天掘り鉱山での作業で用いられる重機は非常に巨大で,運転手は他の重機の接近を目視で把握しづらい状況に晒されており,周囲の状況を目視以外で把握できることが求められる.他の車両の存在を把握する手段として,車車間通信を用いるアプローチが挙げられるが,巨大な重機や,段差のある鉱山特有地形を対象とする車車間通信の研究は行われていない.本研究では,露天掘り鉱山において,鉱山用重機間の車車間通信により,周辺に存在する重機の存在を把握する手法を提案し,重機間の位置関係やアンテナの設置位置を基にしたシミュレーション実験において,鉱山用重機間通信の通信可否領域を示した.
[推薦理由]
この論文は,露天掘り鉱山における重機を対象に,車車間通信によって,他の車両の存在を把握する手法の提案と評価である.一般道を走行する乗用車を対象とした,車車間通信による他車両を把握する研究は多数行われているが,本論文では,鉱山用の非常に巨大な重機を対象とし,重機周辺の電波伝搬モデルを作成し,電波強度モデルと実測データとの比較を行っている.さらに,露天掘り鉱山特有のすり鉢状の段差がある地形をモデル化し,その地形を走行する重機間の位置関係やアンテナの設置位置を基に,上記電波伝搬モデルを用いたシミュレーションにて,電波強度を推定している.推定結果は,鉱山用重機における他車両の検知能力を示すものであり,実環境への適応を考えるうえで,大いに参考となるものである.以上の理由により,情報処理学会論文誌の論文賞に相応しいと判断したため,この論文を推薦する.
長船辰昭 君
1996年東京大学物理工学科卒業.1998年同大学大学院物理工学専攻卒業.現在,日立製作所研究開発グループ所属.博士(情報科学).ITS,テレマティクス等の研究に従事.IEEEメンバー.
西村友佑 君
平成28年大阪大学基礎工学部情報科学科卒業.平成30年同大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了.修士(情報科学).在学中,ITSに関する研究に従事.
加藤聖也 君
2005年東京大学地球惑星物理学科卒業.2007年同大学大学院地球惑星科学専攻卒業.現在,日立製作所研究開発グループ所属.ITS,テレマティクス等の研究に従事.
廣森聡仁 君
平成16年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.平成17年株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社.平成20年大阪大学大学院情報科学研究科助教.平成26年同大学未来戦略機構講師.平成28年より同大学経営企画オフィス准教授.博士(工学).モバイルアプリケーションやモバイルネットワークの設計および性能評価に関する研究に従事.IEEE会員.
山口弘純 君
平成10年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.同年オタワ大学客員研究員.平成11年大阪大学大学院基礎工学研究科助手.平成14年同大学大学院情報科学研究科助手.平成19年より同大学大学院情報科学研究科准教授.博士(工学).モバイルコンピューティング等に関する研究に従事.電子情報通信学会,IEEE 各会員.
東野輝夫 君
昭和54年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.昭和59年同大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.同年同大学助手.現在,同大学大学院情報科学研究科教授.工学博士.分散システム,通信プロトコル,モバイルコンピューティング等の研究に従事.電子情報通信学会,ACM 各会員.IEEE Senior Member,本会フェロー.