「改版履歴の分析に基づく変更支援手法における時間的近接性の考慮と同一作業コミットの統合による影響」

2017年度論文賞受賞者の紹介

改版履歴の分析に基づく変更支援手法における時間的近接性の考慮と同一作業コミットの統合による影響

[情報処理学会論文誌 Vol.58 No.4, pp.807-817]
[論文概要]

 改版履歴の分析によってコードに対する共変更ルールを抽出し,開発者へ必要な変更箇所を推薦する研究が進められている.本研究ではより多くの変更漏れを指摘するために,改版履歴における時間的近接性と同一作業に関する分割コミットに着目し,共変更ルールの質に及ぼす影響を調査した.FirefoxやGCCなどの代表的なOSSを用いた評価実験により,共変更ルールが時間とともに変化すること,時間的近接性の考慮によってより多くの変更漏れを指摘できることを明らかにした.また,同一作業コミットを統合することが,推薦性能の向上に有益であることを明らかにした.

[推薦理由]

 改版履歴を分析して共変更ルールを抽出するうえで、1)時間的近接性、2)同一作業コミットの統合、に着目し、この2つの特性が共変更ルールの質にどのような影響を及ぼすかを調査し、時間的近接性の考慮によってより多くの変更漏れを推薦できること、同一作業コミットを統合することが,推薦性能の向上に有益であることを明らかにしている。これはソフトウェアの開発の大規模化において、複雑な依存関係によりあとを絶たない、更新漏れの自動抽出の性能向上に貢献するもので社会的意義は大きい。本論文では、大規模なデータで実証実験を行なっている点も評価できる。以上により、本論文を論文賞論文に推薦する。

森 達也 君

 15年東京工大・情報工学科卒.17年同大大学院・情報理工学研究科修士了.同年アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社に入社.ソフトウェア保守,リポジトリマイニング,プログラム変更支援などの研究に従事.

アンダース ハグワード 君

 12年スウェーデン王立工科大卒.15年同大大学院修士了.13年から14年Academic Cooperation Agreement Program (ACAP)の交換留学生として東京工大大学院・情報理工学研究科に在籍.現在,スウェーデン ヨーデボリのIT企業にSEとして勤務.ソフトウェア保守,リポジトリマイニングなどの研究に従事.

小林隆志 君

 97年東京工大・情報工学科卒.99年同大大学院・情報理工学研究科修士了.04年同博士了.博士(工学).02年同大助手.名大・情報科学研究科准教授,東京工大・情報理工学研究科准教授を経て,16年より同大情報理工学院准教授.ソフトウェア再利用,プログラム理解,リポジトリマイニング,複合メディアコンテンツ検索などの研究に従事.