「Toolification of Games:既存ゲームの余剰自由度の中で非ゲーム的目的を達成するゲーミフィケーション周辺概念の提案と検討」

2017年度論文賞受賞者の紹介

Toolification of Games:既存ゲームの余剰自由度の中で非ゲーム的目的を達成するゲーミフィケーション周辺概念の提案と検討
[情報処理学会論文誌 Vol.58 No.4, pp.919-931]

[論文概要]

 本論文では,ゲーミフィケーションの周辺概念であるToolification of Gamesを提案する.「非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること」などと定義されるゲーミフィケーションでは,ゲームの知見を「後づけ」するために適切なゲームバランスと楽しさの実現が難しい点が問題であった.そこで,通常のゲーミフィケーションと比較した時にゲームと非ゲームの大小関係,主従関係が逆であるようなケースとして,「既に完成されているゲームの余剰自由度の中で非ゲーム的目的を達成すること」をToolification of Gamesと定義し,過去の事例分析や新たな事例の開発を通じてその位置づけと性質,可能性を論ずる.

[推薦理由]

 本論文で提案されている、ゲームの余剰自由度に注目したToolificationという概念は、ゲームの「面白さ」を検討するための手法として、既存のどの手法とも異なる独創性に富んだものである。さらに、その有効性を評価するためのモデルの構築と事例解析も着実に行われており、有効性が高く応用範囲の広い手法提案として高く評価できる。近年注目されているゲーミフィケ—ションの可能性を拡げるものであり、論文賞に相応しい優れた論文として推薦する。

栗原一貴 君

 津田塾大学学芸学部情報科学科准教授,博士(情報理工学).HCIおよびEC分野において物議を醸すシステム開発研究を得意とする.著書に「消極性デザイン宣言」がある.2012 年イグノーベル賞,MashupAwards2016最優秀賞等受賞.情報処理学会会員.