2016年度マイクロソフト情報学研究賞

2016年度マイクロソフト情報学研究賞の表彰


五十嵐 悠紀 君(正会員)

「手芸のための対話的な形状デザイン手法」

2005年お茶の水女子大学理学部情報科学科卒業.2007年東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了.2010年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学)取得.2010年より日本学術振興会特別研究員PD, RPDとして筑波大学システム情報系に所属.2015年より明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科専任講師.2016年よりJSTさきがけ研究員,現在に至る.コンピュータグラフィックスおよびユーザインタフェースに関する研究に従事.情報処理学会,ACM学会,画像電子学会等会員.IPA未踏事業プロジェクトマネージャ兼任.第24回先端技術大賞文部科学大臣賞,第10回船井研究奨励賞等受賞.

[推薦理由]
五十嵐悠紀氏は編み物やぬいぐるみ制作などの手芸を対象に,形状モデリングと物理シミュレーションを融合した,制作支援のための新しい技術を提案してきている.これまでに提案された数々のシステムでは,内部的な制約を計算機がシミュ—レートするため,ユーザは手芸での設計に課せられる制約を意識することなく形状デザインに専念できる.問題の定義とそれを解決するアルゴリズムを考案するところに、氏の能力が発揮されており,一連の成果はCG分野における世界最高レベルの国際会議に採択されてきた.本技術を用いたワークショップも広く行っており,子どもたちでもオリジナル作品を設計できることを示していることも評価できる.

 

岡崎 直観 君(正会員)

「言語データの意味的解析による知識獲得と社会観測に関する研究」

2001年東京大学工学部電子情報工学科卒業. 2003年同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了. 2005年英国国立テキストマイニングセンター・リサーチフェロー. 2007年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了. 博士(情報理工学). 2007年同大学大学院情報理工学系研究科特任研究員を経て, 2011年より東北大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻准教授. 同年よりJSTさきがけ研究員を兼務. 自然言語処理, 人工知能, 機械学習の研究に従事. 情報処理学会, 言語処理学会, 人工知能学会, Association for Computational Linguistics (ACL) 各会員. 情報処理学会第72回全国大会奨励賞(2011), 言語処理学会論文賞(2011,2014), 石田實記念財団研究奨励賞(2014), ドコモ・モバイル・サイエンス賞先端技術部門優秀賞(2015), 平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(2016), 第15回船井学術賞(2016)などを受賞. 

[推薦理由]
自然言語処理, すなわち言葉を理解するコンピュータを真に実現するには, 人間の持つ常識的な知識を大量の言語データから自動的に学習する研究が欠かせない. 岡崎直観氏は, 言語に関する常識的知識の獲得に向けて, 単語や句の意味表現の学習, 関係知識や因果関係知識の自動獲得, 言い換え知識の自動獲得, 知識の柔軟な検索などの研究で顕著な成果を上げた. さらに, こうした研究をデータからの社会観測, すなわち人々の文脈や意見を言語ビッグデータから分析するという重要課題に応用し, 言語処理の新しい応用を開拓した.