「Courier: A Toolchain for Application Acceleration on Heterogeneous Platforms」

2015年度論文賞受賞者の紹介

Courier: A Toolchain for Application Acceleration on Heterogeneous Platforms

[IPSJ Transactions on System LSI Design Methodology Vol.8, pp.105-115]
[論文概要]

 本論文では、実行バイナリを動的に解析し関数レベルのデータフローを抽出、GPUで実行が可能な処理を自動的にオフロードするツールチェイン Courierを提案する。解析された関数と同等のGPUコードがあれば、対象バイナリのソースコードや再コンパイル、ユーザの仲介なしに高速化を実現する。Courierは、バイナリ解析部、データフロー再構築部、オフロード部の3つから成り、多くのプログラムに柔軟に対応可能である。ケーススタディでは、画像処理、行列計算、周波数解析の3つのプログラムからデータフローを抽出、それぞれ、8.89倍, 8.16倍, 1.23倍の高速化を達成した。

[推薦理由]

 ヘテロジニアスプラットフォームにおけるアクセラレータの有効利用をバイナリ解析により自動で可能にするアイデアは興味深い。実際にツール群を開発し性能評価を行っており、完成度が高い研究である。

宮島敬明 君

 2015年 慶應義塾大学理工学研究科後期博士課程修了。博士(工学)。現在、宇宙航空研究開発機構 航空技術部門 数値解析技術研究ユニット 研究開発員。宇宙航空分野のシミュレーションのアクセラレータによる高速化に関する研究に従事。情報処理学会会員。

David B. Thomas 君

 英 Imperial College London にて情報工学の修士過程(2001年)と博士課程(2006年)を修了。2010年より同大学 Engineering学部 Electrical and Electronic Engineering学科 講師。FPGAによるモンテカルロ・シミュレーションや乱数生成のアルゴリズムとアーキテクチャ、金融工学に関する研究に従事。IEEE会員。

天野英晴 君

 1986年 慶應義塾大学理工学研究科後期博士課程修了。工学博士。現在、慶應義塾大学理工学部情報工学科教授。並列計算機と再構成可能システムに関する研究に従事。IEEE, ACM, 情報処理学会各会員シニア会員。電子情報通信学会フェロー。