「有価陶磁器製品に対する人工物メトリクス適用のための研究」
2014年度論文賞受賞者の紹介
有価陶磁器製品に対する人工物メトリクス適用のための研究
[情報処理学会論文誌 Vol.55, No.9, pp.1992-2007]
[論文概要]
筆者らは,日々製造される有価陶磁器がブランドメーカーによって製造されたこと(真正性)を検証できる新しい人工物メトリクスを提案し,基礎的な実験によって有効性を示した.この方式では,個々の製品の特徴情報を抽出するための材料として透明なガラス蛍光体を用いるため,同じガラス質である釉薬や絵の具との相性がよく,これらがもたらす色に影響を与えない.また,釉薬の塗布や絵付けという行為によって人工物に材料を付着させるため,工房のマイスターに追加的な作業を求めない.さらに,個々の製品の登録や検証が非接触かつ短時間にできるため,製品に影響を与えることがない.
[推薦理由]
本論文は,有価陶磁器の真正性すなわち真正なブランドメーカーによって製造されたことを検証できる,新しい人工物メトリクスを提案している.提案手法は,透明なガラス蛍光体を用いて個々の有価陶磁器の特徴情報を抽出するため同じガラス質である釉薬や絵の具との相性がよく,また登録や検証が非接触かつ短時間にできるという,優れた特性を持っている.さらに,基礎的な実験によって本方式の有効性を示している.本研究は,ガラス蛍光体を有価陶磁器に溶着させるというアイデアが斬新であり,さらに実験によって有効性と実用性を示しており,高い新規性と有用性を持った研究である.以上の理由により情報処理学会論文誌の論文賞に相応しいと判断し,推薦する.
藤川真樹 君
1998年徳島大学大学院工学研究科博士前期課程修了.2004年中央大学大学院理工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).現在,綜合警備保障株式会社(ALSOK)に所属.セキュリティとセーフティに関する研究に従事.
小田史彦 君
1996年大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期課程修了.2003年同大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).現在,ウシオ電機株式会社に所属.産業用光源とその応用に関する研究に従事.
森安研吾 君
2004年九州大学工学部エネルギー科学科卒業.2006年同大学大学院総合理工学府量子プロセス理工学専攻修士課程修了.現在,ウシオ電機株式会社に所属.光機能材料及び放電ランプに関する研究に従事.
渕真悟 君
2002年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).現在,青山学院大学理工学部准教授.ガラス蛍光体や化合物半導体量子構造を用いた光電子材料の開発と応用に関する研究に従事.
竹田美和 君
京都大学工学博士(電子工学専攻).1977年より京都大学工学部電気工学科助手,講師,助教授,1991年より名古屋大学工学部材料機能工学科教授.2013年定年退職.名古屋大学名誉教授,特任教授.現在,(公財)科学技術交流財団あいちシンクロトロン光センター所長.半導体エピタキシャル膜の成長・評価・デバイス応用に関する研究に従事.