「密な基地局群の無線相互干渉調停のための空間分割スケジューリング技術」
2014年度論文賞受賞者の紹介
密な基地局群の無線相互干渉調停のための空間分割スケジューリング技術
[情報処理学会論文誌 Vol.55, No.2, pp.826-837]
[論文概要]
本論文では,無線基地局が密に設置され,将来的に追加設置されていくような地理空間環境において,無線資源の高い利用効率と資源管理の容易性をともに達成する空間再利用型時分割多重アクセススケジューリング技術を提案する.提案手法では,地理座標に対して規則的でかつ必要資源数がなるべく少ない資源割り当てを実現するアルゴリズムを開発し,網羅的なシミュレーション実験により提案手法の有効性を評価している.また,高度交通システム向け帯域を時分割利用する路側機の配置設計事例に応用し,実システムでの有用性を検証している.
[推薦理由]
本論文は,密な無線基地局配置や,将来の基地局追加が想定される地理空間環境において,無線資源の高い利用効率と資源管理の容易性の両者を達成する空間再利用型時分割多重アクセス(STDMA)スケジューリングアルゴリズムを提案している.同アルゴリズムは,将来の基地局追加の際にも既設の無線基地局への与干渉の低減を十分に考慮した新規の無線資源割当パターンの導出を可能としているが,これにより,本研究には同様の無線資源割当を取り扱う既存研究とは一線を画す特筆すべき優位性が認められる.また,本研究は,領域間の干渉を最小化する最適化問題として問題を定式化しこれを解く理論的な手法を採用しているが,一方では,高度交通システムを想定した現実的な路側機設計事例に提案アルゴリズムを応用した場合にもその高い有用性が認められることから,実用面を考慮した場合にも優れた研究であると言える.以上の理由により情報処理学会論文誌の論文賞に相応しいと判断し,推薦する.
山口弘純 君
平成6年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.平成10年同大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.平成11年同大学大学院基礎工学研究科助手.平成19年より同大学大学院情報科学研究科准教授.博士(工学).モバイルコンピューティングに関する研究に従事.情報処理学会シニア会員,電子情報通信学会,IEEE各会員.
廣森聡仁 君
平成16年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.平成17年株式会社NTTドコモ入社.平成20年大阪大学大学院情報科学研究科助教.平成26年より大阪大学未来戦略機構講師.博士(工学). モバイルアプリケーションやモバイルネットワークの設計および性能評価に関する研究に従事.情報処理学会,IEEE各会員.
東野輝夫 君
昭和54年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.昭和59年同大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.同年同大学助手.現在,同大学大学院情報科学研究科教授.工学博士.分散システム,通信プロトコル,モバイルコンピューティング等の研究に従事.電子情報通信学会,ACM 各会員.IEEE Senior Member.本会フェロー.
梅原茂樹 君
平成23年奈良先端科学技術大学院大学修士課程修了.同年住友電気工業(株)入社.以来,ITS向け移動体通信の研究・開発に従事.
浦山博史 君
平成12年名古屋大学工学部電気電子情報工学科卒業.平成14年同大学大学院修士課程修了.同年(株)豊田自動織機入社.平成20年住友電気工業(株)入社.以来,ITS向け移動体通信の研究・開発に従事.
山田雅也 君
昭和61年神戸大学工学部システム工学科卒業.同年住友電気工業(株)入社.以来,ITS向け移動体通信の研究・開発に従事.
前野誉 君
平成20年新潟大学大学院修士課程修了.同年(株)スペースタイムエンジニアリング入社. 以来,移動通信システムに関する研究・開発に従事.
金田茂 君
平成13年東京工業大学工学部電気電子工学科卒業.平成15年同大学大学院理工学研究科修士課程修了.同年株式会社NTTドコモ入社.平成26年大阪大学大学院情報科学研究科博士課程修了.博士(工学).現在,米国法人スペースタイムエンジニアリングDirector of Engineering.情報処理学会,電子情報通信学会各会員.
髙井峰生 君
平成9年早稲田大学大学院博士後期課程修了.平成19年米国法人スペースタイムエンジニアリング設立.現在,カリフォルニア大学ロサンゼルス校主幹開発研究員ならびに大阪大学大学院情報科学研究科招へい准教授.モバイル通信システム及びその評価方法についての研究に従事.情報処理学会,ACM,IEEE各会員.