「人間とデバイスの感度の違いを利用したディスプレイ盗撮防止方式」

2013年度論文賞受賞者の紹介

人間とデバイスの感度の違いを利用したディスプレイ盗撮防止方式

[情報処理学会論文誌 Vol.54, No.9, pp.2177-2187]
[論文概要]

 ディスプレイに表示された情報の盗撮を防止する方式を提案する.提案方式は,人の視覚に影響を与えずにカメラの撮像デバイスに赤外ノイズを付加する盗撮防止ユニットを既存のディスプレイに設置することで,ディスプレイの表示領域全面にノイズを付加し,盗撮を無効化する.さらに,盗撮者が赤外フィルタをカメラに装着して,赤外ノイズを除去する場合を想定し,その対策として,赤外フィルタの赤外鏡面反射特性を利用したフィルタ検出方式を提案する.提案方式は,ディスプレイの盗撮による機密情報や個人情報の漏えい防止のほか,美術品や工場内設備などの実体物の盗撮防止にも適用可能である.

[推薦理由]

 近年、デジタルカメラなどの撮影デバイスの普及に伴って、盗撮による情報漏洩が問題となっている。本論文では、人間と撮影デバイスの赤外線に対する感度の違いを利用して、ディスプレイの表示に赤外線のノイズを付加することにより、ディスプレイの盗撮を防止する方式を提案している。さらに、提案方式を実装した装置を作成し評価を行うことにより、提案方式の有効性を示している。論文としての完成度も高く、優れた論文であることから、情報処理学会の論文賞に相応しいと判断し、推薦する。

山田隆行 君

 2012年総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻博士後期課程修了.現在,国立情報学研究所共同研究員.情報セキュリティの研究に従事.博士(情報学).

合志清一 君

 1981年早稲田大学大学院理工学研究科博士前期課程修了.同年NHK入局.1984年よりNHK放送技術研究所において,映像信号のデジタル信号処理,伝送,番組応用,電子透かしの研究に従事.2008年より(株)シャープにおいて,次世代テレビの研究開発に従事.現在,工学院大学情報学部情報デザイン学科教授.博士(工学).

越前功 君

 1997年東京工業大学大学院理工学研究科博士前期課程修了.同年日立製作所入所,2007年より国立情報学研究所准教授,総合研究大学院大学准教授を兼務.現在,同研究所教授および同大学院大学教授.2010年ドイツ・フライブルグ大学客員教授.2011年ドイツ・マルティン・ルター大学客員教授.コンテンツセキュリティの研究に従事.博士(工学).