「任意形状の堆積形成手法」

2013年度論文賞受賞者の紹介

任意形状の堆積形成手法

[情報処理学会論文誌 Vol.54, No.3, pp.1220-1229]
[論文概要]

 本論文では,任意の構成要素を指定した形状に凝集させる手法を提案する.ここでは,堆積を凝集体表面付近に構成することで,全体として堆積した凝集体を表現する.また,任意の形状に凝集させるために,物理法則を考慮せずに凝集体を生成する.はじめに,指定した凝集体の形状に沿って構成要素を干渉するように配置する.次に,構成要素どうしの干渉を解消するために,凝集体の形状の法線方向に干渉が少なくなるように構成要素の位置を調整する.実験によって,本手法が少ない計算コストで堆積を表現できることを確認した.本手法を用いることにより,おにぎりなどの凝集体を表現することができる.

[推薦理由]

 当該論文は任意の構成要素による任意の凝集体を生成するコンピュータグラフィクスの手法を提案している。提案手法は、物理法則では表現できない任意の形状を実現しており、計算機の仮想性を活用して人間の想像的創作を支援するものである。また、GPUを用いた並列計算によって、多くのバリエーションを比較的短時間で自動的に生成することを可能としている。上述の通り、情報処理技術により人の表現能力を高める研究として、新規性、有用性に関して高い水準にあり、デジタルコンテンツ創作分野の発展に貢献する研究であると判断する。以上の理由により情報処理学会の論文賞に相応しいと判断し、推薦する。

櫻井快勢 君

 大日本印刷株式会社所属。2006年 金沢工業大学工学部情報工学科卒業。2008年 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科 博士前期課程 修了。同年 大日本印刷株式会社 入社。2010年 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科 博士後期課程 入学。2013年 同課程修了。専門は質感表現。博士(知識科学)。

宮田一乘 君

 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科教授。1984年東北大学工学部応用物理学科卒。1986年東京工業大学物理情報工学専攻修士了。1986-1998年日本アイビーエム(株)東京基礎研究所。1998-2002年東京工芸大学芸術学部助教授。2002年北陸先端科学技術大学院大学知識科学教育研究センター教授を経て、2012年より現職。専門はCG、メディアインテグレーション。博士(工学)。