「ログの改ざんと喪失を防止するシステムの仮想計算機モニタによる実現」
2012年度論文賞受賞者の紹介
ログの改ざんと喪失を防止するシステムの仮想計算機モニタによる実現
[情報処理学会論文誌 Vol.53 No.2, pp.847-856]
[論文概要]
計算機の動作の把握には,計算機上のログが重要である.しかし,攻撃や問題の発生によりログの改ざんや喪失が起こる可能性がある.この問題に対処するため,仮想計算機モニタ(以降,VMM)を用いてログの改ざんと喪失を防止するシステムを提案する.提案システムでは,対象の仮想計算機(以降,VM)で動作している応用プログラムとオペレーティングシステム(以降,OS)のログを,ゲストOSのソースコードの修正なしにVMMが取得する.また,取得対象となるVMからログを隔離することで,取得したログの安全性を確保できる.さらに,ログを隔離し多重化することでログの改ざんを検出できる.
[推薦理由]
本論文は、計算機上のログの改ざんや喪失といった問題に対処するために、仮想計算機モニタを利用することにより,改ざん、損失を防止する手法を提案している。具体的には、仮想計算機上で動作する応用プログラムとOSのログをゲストOSのソースコード修正なしに仮想計算機モニタが取得し、取得対象となる仮想計算機からログを隔離することで、安全性を確保し、そのログを多重化管理することで改ざんを防止する手法を提案している。提案手法は、新規性、有用性とも高く、論文全体の完成度も高い。また、最近特に社会的にも問題となっている点である計算機の動作を正しく把握することができるという点で大きな成果が得られたといえ、本論文の有益性は非常に高く、論文賞に値する。
佐藤将也 君
2010年岡山大学工学部情報工学科卒業.2012年同大大学院自然科学研究科博士前期課程修了.同年同大学院博士後期課程入学.現在,在学中.2013年日本学術振興会特別研究員(DC2).コンピュータセキュリティ,仮想化技術に興味を持つ.
山内利宏 君
1998年九州大学工学部情報工学科卒業.2002年同大大学院システム情報科学府博士後期課程修了.2001年日本学術振興会特別研究員(DC2).2002年九州大学大学院システム情報科学研究院助手.2005年岡山大学大学院自然科学研究科助教授.現在,同准教授.博士(工学).オペレーティングシステム,コンピュータセキュリティに興味を持つ.