「WWWからの大規模動詞含意知識の獲得」
2011年度論文賞受賞者の紹介
「WWWからの大規模動詞含意知識の獲得」
[情報処理学会論文誌 Vol.52, No.1, pp.293-307]
[論文概要]
テキスト間含意関係認識技術は深い自然言語理解を要するタスクにおいて重要である.この技術が実用レベルに至るには大規模含意知識ベースの構築が必須である.本稿では,動詞間含意関係知識の大規模な獲得を目的として,条件付き確率に基づく方向付き類似度尺度を提案する.WWW上の一億文書から得た52,562動詞を対象とした評価実験では,比較対象の先行研究の全手法の精度を提案手法が上回ることを確認した.また,提案手法のスコア上位10万の出力を人手評価したところ,大規模動詞含意知識ベースを構築する出発点としてリーズナブルな精度が得られていることを確認した.
[推薦理由]
当該論文は、WWWからの大規模知識獲得という、応用可能性の高い研究であり、提案手法の妥当性、その検証の信頼性という点でも評価できる。また、総じて論文の完成度も高い。よって、研究内容、論文の完成度、および研究成果の有用性のいずれの観点からも、情報処理学会論文誌の論文賞に相応しい論文であると判断し、論文賞に推薦する。
橋本力 君
2005年神戸松蔭女子学院大学で博士(言語科学),2011年京都大学で博士(情報学)を取得.京都大学情報学研究科産学官連携研究員, 山形大学大学院理工学研究科助教を経て,現在、独立行政法人情報通信研究機構研究員.自然言語処理の研究に従事.情報処理学会,言語処理学会,ACL会員.言語処理学会論文賞,言語処理学会年次大会優秀発表賞など受賞.
鳥澤健太郎 君
1995年東京大学大学院理学系研究科博士課程中退.同年同研究科助手.1998年-2002年,科学技術振興事業団さきがけ研究21研究員兼任.北陸先端科学技術大学院大学助教授を経て,2008年より情報通信研究機構グループリーダー.2011年より同機構情報分析研究室室長.博士(理学).自然言語処理研究に従事.日本学術振興会賞など受賞.
黒田航 君
元 独立行政法人 情報通信研究機構 知識創成コミュニケーション研究センターMASTARプロジェクト 言語基盤グループ 短時間研究員.京都工芸繊維大学,早稲田大学総合研究機構を経て,現 杏林大学.京都大学から人間・環境学博士を取得.言語学と自然言語処理を融合する研究に従事.
デサーガステイン 君
2006年 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科 博士課程修了.博士(知識科学).北陸先端科学技術大学院大学研究員を経て,2007年に情報通信研究機構に入所.2008年にNICT MASTAR プロジェクト言語基盤グループに専攻研究員として着任.現在,同機構主任研究員.自然言語処理を用いた知識獲得の研究に従事.
村田真樹 君
1997年京都大学大学院博士課程修了.博士(工学).同年,京都大学にてリサーチ・アソシエイト.1998年通信総合研究所入所.情報通信研究機構主任研究員を経て,2010年鳥取大学大学院工学研究科教授.自然言語処理の研究に従事.FIT2005論文賞受賞.言語処理学会,人工知能学会,電子情報通信学会,計量国語学会,ACLなどの会員.
風間淳一 君
独立行政法人情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所 情報分析研究室 主任研究員.2004年 東京大学大学院情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻博士課程修了.博士(情報理工学).同年, 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科助教.2008年より情報通信研究機構.自然言語処理の研究に従事.