齊藤 忠夫 君

2014年度功績賞受賞者の紹介

齊藤 忠夫 君 (さいとう ただお)

 本会正会員齊藤忠夫君は,永年にわたりディジタル交換方式,プロトコル工学,コンピュータネットワークなどの通信ネットワークとコンピュータ技術を一体化するシステムの研究に携わり,当該分野を国際的に牽引してこられました.
 ディジタル交換方式では,同君の研究を原型とした交換網は1975年以降世界のディジタル交換機の標準になりました.この研究に関して発明したキャパシタ形の記憶素子と同じ回路によるメモリは,CMOSメモリとして今日の電子技術の基本となっています.また,現在主流となっている交換型のローカルエリアネットワークの考え方をいち早く提案され,東京大学大型計算機センター長,同情報基盤センター長としてJPNICの立ち上げを支援されるなど,我が国および世界のコンピュータネットワークの発展に貢献されました.
 また同君は,文部省学術国際局科学官を7年間務められたほか,文部省,通商産業省,国土庁,郵政省,総務省,内閣府などの多くの審議会等に委員・専門委員として参画されました.特に郵政省・総務省においては,電気通信審議会会長代理,電気通信事業部会長,技術分科会長として,インターネット時代にふさわしい事業体系の構築に貢献されました.ADSLの環境整備,全国光ファイバ化計画,相互接続ルールの法制化などは同君の主導によるものです.現在も一般財団法人データ通信協会の理事長を務めておられ,競争状態にある通信事業者が同時に安定なネットワークの運用のために相互協力する環境の整備を進めておられます.
 本会においては,1992年度および1993年度に理事,1993年から2003年に英文図書出版委員会の委員長を務められたほか,1993年から2014年までの長期間IFIP TC 6(通信システム)の日本代表,2005年から2014年までIFIP全体会合の日本代表を務め,本会を代表されました.
 これらの業績は,電子情報通信学会からの稲田賞,2回の論文賞,業績賞,フェロー称号,名誉員称号,功績賞,電気学会からの論文賞,2回の郵政大臣表彰ならびに電波の日総務大臣表彰,市村賞貢献賞,前島密賞,IEEEからのライフフェローの称号などにより国内外から高く評価されております.
 以上のように,同君が国内外の情報通信分野の発展と教育・研究ならびに本会の発展に尽くされた功績はまことに顕著であります.