山口 英 君
2016年度顕功賞受賞者の紹介
山口 英 君 (やまぐち すぐる)
山口英君は学生時代も含めて長年に亘りコンピュータネットワークへの情熱を持ち続け, エネルギッシュに新技術の開発に関って来ました. 広域分散環境, その認証技法, 通信衛星を使ったグローバルなインターネット接続技術, さらに東南アジアへの講義配信のインフラ整備など, 前項に述べたとおり八面六臂の活躍で多くの業績を残されました.この数年, 病魔と戦い, 周囲の千祈万祷も空しく他界されたのは, 遺感の極みであります.同君の生前の功績に対して, 第612回理事会(2016年7月)の議を経て,2016年9月13日開催のWIDEプロジェクト報告会で贈呈された顕功賞をご紹介いたします.
山口英君は大阪大学院生の頃より広域分散環境での計算機の利用に関して研究を積み, World Wide Webが出現するやその活用技術に多くの提案をした. 1990年頃より, WIDEプロジェクトのボードの一員として, プロジェクトの運営や学生の指導に関与した. 通信衛星を使ったグローバルなインターネットアクセスの可能性が見えると, 多くの困難を克服し, 国内の拠点間を結ぶインターネット回線の確立を成功させた. さらに衛星回線により, 日本から東南アジアへのインターネット接続を可能とさせ, 東南アジアの複数の大学への講義配信の道を開いた. 1990年代半ばより, サイバーセキュリティにも深い関心を持ち, その啓発に腐心した. その知識の故に, 2004年に内閣官房の情報セキュリティ補佐官に就任. 我が国のインターネット回りの安全を守るべく注力した.
WIDEプロジェクトのボードメンバーの他, INET '92(神戸)のローカルオーガナイザを勤め, AI3の代表になり, JPNIC理事やJPCERT/CCの代表理事を歴任した.
山口英君の生前の目覚しい業績に対し,顕功賞を贈呈し,永く表彰いたします.
1964年 静岡県生まれ
1988年 5月 WIDEプロジェクト設立に携わり,ボードメンバに就任
1990年10月 大阪大学大学院基礎工学研究科情報工学専攻博士後期課程を中退し,
大阪大学情報処理教育センター・助手として着任
1991年 3月 同大学院基礎工学研究科情報工学専攻にて,博士(工学)を取得
4月 奈良先端科学技術大学院大学創設準備室にて同大設立に携わる
1992年10月 同大情報科学センター・助教授
1993年 4月~ 同大情報科学研究科・助教授
1996年~2003年 JPCERT/CCを設立,運営委員会委員長
1996年 Asian Internet Interconnection Initiatives(AI3) を設立し,
代表に就任.サイバー関西プロジェクトを設立
2000年 4月~ 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科・教授
2002年 4月~ 2004年3月 同大附属図書館長を併任
2002年~ JPNIC理事
2003年 JPCERT/CCの中間法人化に伴い代表理事就任(2004年5月に退任,以降は理事)
2004年 4月~ 内閣官房情報セキュリティ対策推進室情報セキュリティ補佐官
2005年 4月~2010年 3月 内閣官房情報セキュリティセンター情報セキュリティ補佐官
2011年 6月~2013年 4月 FIRST(Forum of Incident Response and Security Teams)理事
2013年 4月~2015年 3月 奈良先端科学技術大学院大学総合情報基盤センター長兼附属図書館長を併任
2016年 5月 逝去
本会関連略歴
1985年 12月 入会
コンピュータセキュリティ研究会 運営委員(1998年4月~2001年3月)