2020年08月03日版:田中 淳裕(財務担当理事)

  • 2020年08月03日版

    「在宅ワークと温故知新
    田中 淳裕(財務担当理事)

     昨年度より財務担当理事を担当しており、今年(2020年)の6月(総会)より2年目に突入しました。本会は会員減少が相変わらず続いております。ジュニア会員制度の継続的な強化施策等の効果もあり若年層の会員が増えている一方で、企業系の会員数の減少が続いています。全体としては会員の減少幅がやや小さくなってきております。IT技術が世の中で当たり前に使われている状況を考えると、企業ユーザに本会の価値を知ってもらう必要性を日々感じております。

     さて世の中では新型コロナウイルスの影響が続いております。5月末に緊急事態宣言が解除されていったんは落ち着いたかに見えましたが、この原稿を執筆中の7月中旬には新規感染者が連日のように増加しております。本会に限らず学会関係のイベントは基本オンラインでの開催となりました。また仕事のスタイルも、オフィスではなく在宅の割合が大幅に増えてきています。ウイルスに対するワクチンや抜本的な治療法が確立するまでは、このような状況が年単位で続くだろうと、個人的には考えています。

     実は7月初旬の1週間、普段住んでいる東京を離れて、北海道の実家で在宅ワークを試してみました。自宅での在宅ワークはすでに4~5月の2カ月間体験していますので、通信環境とPCやスマホがあれば仕事ができることは事前に検証済みです。ただし、今回は何かあっても容易には出社できない環境での在宅ワークです。結果は(当たり前かもしれませんが)問題なく業務を進めることができました。オンラインで会議を行い(学会の委員会も2つ含まれています)、メールやメッセージングツールを駆使して業務を進めるスタイルは、どこで仕事をしようと変わりません。ようやく分散オフィス環境が現実のものになったことを実感しました。

     通勤時間がなくなり空いた時間で、試しに「分散オフィス」関係の研究論文を電子図書館で検索してみました。この分野は1990年代初頭から研究が行われ、2010年以降ではオフィス機器の遠隔制御や、分散オフィス環境におけるセキュリティマネジメント等が議論されています。今回一連のコロナ禍により、多くの人が在宅ワークを強いられているかと思いますが技術的な検討は30年前から行われ、一部の課題は未解決であるものの実際に使われ始めている、ということを改めて理解することができました。

     今後、コロナ禍を転じて福となすための対策・ソリューションを考案し実現する立場の方が企業ユーザには多いと想像しております。新しい製品やサービスを考案する段階で、一度立ち止まり過去の先駆け的な研究を振り返ってみてはいかがでしょうか。本会にはそれだけの技術の蓄積があると今回学ぶことができました。オリジナル技術が登場した社会背景やその時々のモチベーションを一度振り返り、新しい時代に合わせた形に仕立てあげることで、長く使われる製品・サービスの設計に生かせられると考えております。会員の皆さまやご家族のご健康を祈念しつつ、今回の禍をきっかけに情報処理技術の力で社会を良い方向に変えるために、本会のアセットを最大限活用していただければと思います。