2025年1月9日版:田村 孝之(財務担当理事)

  • シェアする
  • ポスト
  • noteで書く
  • LINEで送る
  • 2025年1月9日版

    「学会DX その2

    田村 孝之(財務担当理事)

     先日、隣家の解体工事の際に水道管が破損し、自宅が8時間ほど断水するという体験をしました。元は1つの敷地だった所を分割していたため、必要な配管を含めて撤去してしまったようです。まったくの想定外で、各種連絡に手間取りましたが、仮の処置で当日の内に復旧したのはむしろ意外でした。ただ、待っている間はやきもきし、インフラ業界はDXを進めて地下埋設物をデータ化し、工事業者にシミュレーションさせるべきだ、などと妄想を広げておりました。

     それはさておき、情報処理学会のDXですが、財務担当理事が情報システム・DX委員会の委員長を務めることになっています(かつて会員システム開発で多額の費用がかかったのが契機とか)。本委員会は、学会の中長期目標に沿って21年度に情報システム委員会から改称され、ニューノーマルに向けたBCPの観点と、デジタルを活かす攻めの観点から、DXを冠して発足したものです。このとき始まった5カ年計画の全体像については、2021年8月の上原理事によるメッセージ「学会DXへの取り組み」を参照ください。私が就任した23年度には多くの取り組みが軌道に乗っている状況でしたが、当初の委員会資料を読むと、サービスの選定等でさまざまな試行錯誤があったことが分かります。委員や事務局の皆様の奮闘に頭が下がる思いです。

     BCPについては、オンライン会議や文書共有等の各種サービスを導入したのはもちろんのこと、事務局内のテレワーク環境整備に加え、経理・契約・勤怠管理等のペーパーレス化を進め、すでに一段落しています。イベント受付のキャッシュレス化にも対応し、研究会運営等が簡素化されたのは大きな効果と感じます。攻めのDXについては、マーケティング観点で会員システムのデータ活用を進めるため、別々のシステムに登録されていた会員データやイベント参加者データを統合し、セグメント別にメール配信を行えるようになりました。一方、基幹システムのクラウド化や財務システムの電子化、さらにはそれらを推進するCDOポストの設置についてはハードルが高く、時間をかけて検討することとしています。

     現在進行中で間もなく完了というステータスにあるのが、電子図書館(情報学広場)の移行です。次期システムWEKO3は、現行WEKO2の機能を基本的に踏襲した上で、詳細検索機能の改善として、閲覧中の雑誌を対象とした検索ができるようになります。基盤部分の大きな更改を伴うため、動作検証に時間を要しましたが、ようやくリリースが見えてきました。

     以上を含む取り組みにより情報システム・DX関連の支出は増え、22年度にはそれ以前を20%ほど上回りました。ただし、各種イベントが完全リモート開催だったため、会場費や出張旅費の削減により、学会全体の支出は約10%減となっています。新型コロナが5類移行した23年度の支出は19年度をやや上回り、対面イベントの復活が本格化した24年度の収支がどう着地するか、これから見届ける必要があります。

     25年度は、現在の中長期目標の最終年度です。急を要するDXの対応は一通り果たせる見通しですので、そろそろ次のステップを考えるときでしょう。これまでに導入したサービスやツールには、単体での利用だけでなく、連携による利便性向上の余地があるかもしれません。各種イベントに付随して得られる情報も増えているので、横断的に分析することで会員サービスの向上や運営の効率化につながるヒントが得られるはずです。さらに、こうした取り組みを、DX疲れを起こさないよう進めて行く工夫も必要です。理事の任期は残り半年を切りましたが、データやプロセスの地下に埋もれた価値を見出せるよう、引き続き考えてまいります。
  • シェアする
  • ポスト
  • noteで書く
  • LINEで送る