「あらゆる世代の交流の場としての学会」
高岡 詠子(教育担当理事)
教育担当理事は学会の教育活動の充実と人材育成を主な活動として、情報処理教育委員会の活動と大きなかかわりがあります。ほぼ2年務めましたが、この間に、文部科学省より先導的大学改革推進委託事業「超スマート社会における情報教育の在り方に関する調査研究」を受託・実施し、全大学を対象とした情報学教育に関する調査という画期的な取り組みを行いました。日本の大学での情報教育の実態が見えてきました。情報処理教育委員会では、この活動と一体化して情報学の標準カリキュラムJ17に向けた活動を進めています。同じく文部科学省の5つの大学入学者選抜改革推進委託事業の一つである「情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発」を大阪大学から再委託され実施しており、模擬試験の策問、実施支援、採点、知識体系の整理などを行っています。どちらも多くの企業・大学が集まっている学会だからこそ実施できているのではないでしょうか。この2年で痛切に感じたことは、2020年以降に初等中等教育においてプログラミングが必修化する際のサポートを皮切りに、本会は、他の組織や学会と連携して日本の情報教育を支えるべきであり、その中心となって積極的に活動すべきであるということです。そのため色々な枠組みを作っていく必要があると思います。
一方、学会が、交流の場であることはいまさら改めて言うことではないのですが、大学や企業で情報を専門とする会員相互の交流が主であったところから、最近では小学生以上の生徒さんもジュニア会員として交流の場に参加できるようになってきています。私が理事である間には時間的に厳しいかもしれないのですが、ジュニア会員向けのイベントとして今後ぜひ企画したいのは、全国大会やFITなどでのジュニア会員向けセッションです。第78回全国大会ではジュニア会員セッションとして、高校生に発表してもらうイベントを行いましたが、そういう場所をもっと作っていきたいと思います。今の高校生は外部で発表する機会が増えていて、そのような場所に発表を聞きに行く機会が多いのですが、発表する場を探している高校もあります。発表の場だけでなく、中学生や高校生がイベントを企画するというのも面白いかもしれないと思います。ジュニア会員向けの招待講演などもあっていいと思います。高大連携活動で高校生が大学の研究室訪問をしたり、大学や企業の専門家が高校に講義に行ったりしていることを考えれば、全国大会でそのような、ジュニア会員とそれ以上のあらゆる世代の会員との交流の場を設けるのはそれほど難しくない気がします。
今月(2018年2月)には、ジュニア会員がシンポジウムで最優秀発表賞を受賞した研究発表を情報処理学会論文誌「教育とコンピュータ」に投稿し、査読を経て採録された論文が掲載されます。学会は今後、ジュニア会員の持つパワーをもっと引き出すことができるのではないでしょうか。それは長年の教育経験を積んだシニア会員を始め、学会に長くかかわってきた私たちの役目だと思っています。そして、この活動には小中高の先生のサポートが不可欠です。先生方が参加しやすい週末にイベントを開催する、また、参加費や交通費のことも考慮しながら、定例的に実現できれば学会はますます生き生きとしてくるのではないでしょうか。