2021年04月19日版:小野寺 民也(長期戦略担当理事)

  • 2021年04月19日版

    「ゆゆしき問題
    小野寺 民也(長期戦略担当理事)

     長期戦略担当理事の小野寺(日本IBM)です。2019年度から任についております。僭越ながらメッセージをしたためましたのでご一読いただけると助かります。

     学会には「ゆゆしき問題」があります。会員数の減少です。会員数グラフは1992年にピークに達したあと減少に転じ、爾来長期減少傾向が続いています。もちろん、学会も手を拱いていたわけでもなく、意欲的な施策を次々と打ち出してきました。2000年実務家向け産業フォーラム開設、2005年ソフトウエアジャパン創設、2006年ITフォーラム創設、2010年デジタルプラクティス創刊、などなどです(ほかにもあります)。それでも減少傾向に歯止めがかかることはなく、まさに「ゆゆしき問題」たるゆえんなわけです。そして2014年度からは、ついに、ゆゆしき問題担当理事ならぬ長期戦略担当理事が設置されることと相成りました。私は4人目になります(長期戦略担当理事は2人体制で任期は実質4年です)。

     ここで驚くべき(といっておきます)事実があります。学会員を学術会員(大学の先生や学生)と企業会員に分けると、学術会員はゆるやかながら1992年以降もおおむね増加傾向にあるのです。減少傾向にあるのは企業会員なのです。ということは、この傾向が続くと仮定すれば、(遅くとも)下降線を延長して企業会員がゼロになる年(おそろしくて想像したくもありませんが)からは、会員数グラフは上昇に転じているはずです。この事実をもとに、長期戦略担当理事お役御免を事務局長に申し出ようとも思いましたが、思いとどまったのはいうまでもありません。

     今、学会では組織改革が議論されており、いわゆるCMO(Chief Marketing Officer)の設置も検討されています。CMOのもと、積極的戦略的マーケティング活動を通じて会員増を計ろうというものです。本格的な活動がこれからはじまっていくこととは思いますが、その前に、会員増のためには認知度向上ということで、私が関与して小さくはじめたことが2つありますのでご紹介します。

     1つ目はSNSの積極活用です。具体的には Twitterでの発信の強化刷新です。これまでは専任の担当者がいなかったのですが、昨年の夏にWokring Groupを編成し9月から試験的に活動してもらいました。稲見会誌編集委員長にWGリーダをお願いし、若い活動員たちが斬新な発想でさまざまにTweetしてくれたおかげで、フォローアー数は当初の3,000人から4,000人を超えるまでになりました。何が有効で何が有効でないか知見もたまってきました(企業秘密につき詳細は話せません)。4月からは正式な活動として継続することも決まりました。まだご覧になってない方は、生まれ変わった「情報処理学会/IPSJ(https://twitter.com/IPSJ_official)」をぜひフォローしてみてください。

     2つ目は「情処ウェビナー」の立ち上げです。会員非会員を問わず無料で参加いただけるもので、学会として情報処理について広く社会に発信すべきということで開始しました。記念すべき第1回は、企画担当理事の松尾豊東京大学教授にお願いし、深層学習についてお話しいただきました。バーチャル開催の威力で、日本全国津々浦々から参加者があり、フランスデンマークベトナムなど海外からの参加者もありました。参加者数は957名で、44%の方が非会員でした(参加者情報はCMO垂涎かも?)。第2回は、2021年5月28日に、日本科学未来館の新しい館長に就任した日本IBMの浅川智恵子氏にご講演いただく予定です。

     「ゆゆしき問題」におそらく特効薬はなく、地道に辛抱強く試行錯誤を続けていくことしかないのかもしれません。あと2年の任期がありますので、微力ながらも何かしらお役に立てるように苦悶を続けてみます。もし、何か秘策をお持ちの方がいらっしゃいましたらこっそり教えていただけると助かります。