この1年は新型コロナの影響で、大半の学会活動がオンラインになる等の大きな変革が起きました。従来は予定の調整が難しく参加できなかった学会イベントや講義等に簡単に参加できるようになり、おそらく新型コロナの影響がなければ導入ができなかった在宅勤務の制度の導入や押印文化の廃止などが社会的に進みました。一方で、大学では学生間の交流の機会が激減して、学会イベントでも休憩時間などでの情報交換する機会が激減してしまいました。また、オンライン国際会議の時差の問題はなかなか辛い問題です。
経済的な状況を見ると、政治主導による経済対策の影響で日経平均株価は30年半ぶりの3万円の大台を回復し、現時点でも3万円弱で推移しています。特に目につくのは、ゲーム・IT・通信業界は最高値を更新あるいは迫る状況であり、情報処理系の分野の躍進がますます期待されるところです。
このような状況の中で、新世代企画委員会の理事を約2年担当してきて、本委員会で私がかかわってきたことについて紹介したいと思います。
まず、新生代委員会の代表的な企画として「
先生、質問です!」と「
IPSJ-ONE」があります。「先生、質問です!」はジュニア会員を含めた学会員から広く質問を集めて、多角的な観点から質問を選び、さらには適切な回答者を探して回答を執筆いただくという企画で、質問集めと回答者探しが大変な作業ですが、鋭い切り口からの回答が好評を得ています。「IPSJ-ONE」は毎年全国大会でのイベント企画として実施しており、新進気鋭の若手の研究者の皆さんの研究を広く知ってもらう機会として成功していると思います。
また、2020年度から始めた新世代企画委員会の新たな企画として「
予算申請書作成メンタリング」と「若手研究者招待講演謝金補助」を開始しました。「予算申請書作成メンタリング」は、日本学術振興会特別研究員 DC1・DC2 の申請者の支援サービスです。内容としては、1)『学振申請書の書き方とコツ』の執筆者である東工大の大上雅史先生による申請書の書き方に関するレクチャーを実施し、2)過去に採択された申請書を共有アーカイブで共有することでノウハウの共有を図り、3)今後は、有志の研究者に協力いただいて申請書のチェックをする予定です。応募者は約50名と順調な滑り出しと言えます。一方、「若手研究者招待講演謝金補助」は、若手研究者の招待講演を学会が支援する取り組みです。2021年度上期の応募は6件で、学会行事が増える後期の応募数増加に期待しています。
2021年3月の全国大会においては、イベント企画として「企業研究者の『熱い想い』をお届けします」と「論文必勝法」に協力しました。「企業研究者の『熱い想い』をお届けします」では、精鋭の研究者にパネリストとして参加いただき、「基礎研究の需要」「自身の興味と自社への貢献を両立できるテーマ」等に関して議論を行い、多様な視点からの議論が白熱しました。また「論文必勝法」では、論文が唯一の価値基準ではないと前置きした上で、特に読者に分かる論文を書くためには容易ならぬ努力が必要であることと、査読の議論で主導権を握るように査読報告書を書くのは論文を書くのと同じぐらい大変であることについて、事例や経験談などをまとめた内容の講演させていただきました。
約2年の任期を経て特に思うことは、これらの活動は新世代委員の皆さん(五十嵐悠紀さん、欅惇志さん、桂井麻里衣さん、村尾和哉さん)が中心となって運営した結果であるということ(本当に頭が下がります)、また学会は大学の若い研究者向けの会員サービスに力を入れるべきと考えて取り組んできました。最後に、ホームグラウンドとしての情報処理学会の発展にこれからも協力したいと考えています。