副会長に就任して1年が過ぎました。昨年度は会員の減少傾向に歯止めをかけることを目標とし、ジュニア会員制度の推進をはじめさまざまな取り組みを行った結果、わずかではありますが個人会員数が増加に転じました。関係各位のご尽力に感謝いたします。
しかしながら正会員数は約1万5千名で、会員数がピークであった1991年の約3万1千人と比べて半分ほどに減っています。大学関係者はあまり減っていない一方、企業に居られる方、特に若い方の減少が顕著で、結果として会員の年齢構成も高齢化が進んでいます。IT産業に従事する方の数はこの間で倍増している
☆1にもかかわらず、です。
過去30年間で、パソコンとインターネットが普及し、あらゆる業務が電子化されて、IT関連産業に従事する人の数が減ることはありませんでした。さらに、スマホが当たり前のものになり、IoT(Internet of Things)が現実のものとなりつつある今、情報処理技術はすべての人のところにまで浸透したと言って過言ではないと思います。その中で「情報処理」を冠する本会の会員数が減り続けていたというのは、時代の急速な変化に追随できず新しいニーズに十分に応えてこなかったからだと反省せざるを得ません。
会員でない方に会員になっていただく、あるいは会員の方に毎年会費を払い続けていただくには、本会の会員であることでその方にどのようなメリットがあるのか、具体的に示されている必要があります。これについて調査研究活動、ITエンジニア向け活動、ジュニア会員施策の3つの視点で考えてみました。
本会には40の研究会と4つの研究グループがあります。そのいくつかは、時代の要請に応えて創設された歴史の浅い学際的な研究会です。情報処理技術の浸透とともに本会に新しい人たちを巻き込んでいくには、研究会や研究グループの機動的な創設と運営が必要です。領域横断的な活動として、2018年にビッグデータ解析のビジネス実務利活用研究グループ、2019年にはオープンサイエンスと研究データマネジメント研究グループを新設しました。いずれも情報処理技術者ではない人たちと共に考えて活動することを志向しています。このような広がりはいろんな方向に向けて考えられると思います。
ITエンジニア向けの活動としては、認定情報技術者制度(CITP)を推進しています。CITPは昨年IFIPによりIP3の認定を受け国際的な資格として通用するものとなりました。CITP保持者は今年3月時点で約9,400名ですが、我が国のIT産業従事者数を考えるともっともっと増えてしかるべきものと思われます。IT産業でない企業にお勤めの方にも積極的に取得していただけるよう考えるべきことがあるかもしれません。終身雇用が前提でなくなり流動性が高まる今後は、資格の重みが増すでしょう。その前提としてCITPの認知度をさらに高める努力を学会として行います。もう1つ、実務活動の論文誌であるデジタルプラクティスについても、そのプレゼンスを高めるための検討を行っています。企業に所属する研究者・技術者が、企業での実用的な研究開発をベースに論文を書き、それを基に学位を取得して、さらに将来の実務家教員へのキャリアパスにもつながる、そのための論文誌としてデジタルプラクティスの位置づけを明確にできればと思います。
ジュニア会員向けの施策は、2018年度もかなり力を入れて行いました。全国大会で企画した中高生ポスターセッションでは、日頃の情報分野での学習成果のポスター発表を公募したところ、40件を超える発表が全国から集まり、コンテストとして優秀発表を表彰するなど充実したものとなりました。今後も毎年開催する方向で検討しています。2018年度末のジュニア会員は前年度の2倍を超える1,642名になりました。もちろんこの数がそのまま学生会員を経て正会員になることは期待できませんが、大人になって情報処理に携わるようになったときに、情報処理学会を思い出して本会で活動することを考えてもらえればと思います。
以上、1年間副会長の立場で学会を見てきて考えたことを紹介させていただきました。改めて申すまでもなく、学会の守備範囲を拡げていくにあたって学会の中核となっている分野がおろそかになってはなりません。伝統を大事にしつつ、新しいことにチャレンジしていく、本会をそのようにしていくために皆様のお知恵とお力をお借りしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
☆1 情報サービス産業協会Webサイト
http://www.jisa.or.jp/explain/tabid/756/Default.aspx