情報処理学会は、「頼られ&相談される」学会を標榜して、行政機関から出されるパブリックコメントの募集(以下パブコメ)に積極的に対応してきました。学会Webサイトの「
提言/プレスリリース」ページにその一覧があります。本原稿執筆時点では、7月の高橋理事のメッセージで紹介され皆様の関心も高いと想定される「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に対して意見をまとめているところです。しかし、どのようにパブコメを作成しているかよく見えないという声を聞くことがありますので、この場を借りて少し説明したいと思います。
パブコメをまとめる役目は、理事会の下に置かれた政策提言委員会が担っています。実際の作業は、企画担当理事(パブコメ編集者)と学会事務局が共同して進めます。より具体的には;
理想的には、上記プロセスをじっくり回して会長の言うところの「2万人のIT専門家集団を代表したバランスの取れた建設的意見」を作り上げてゆくべきなのですが、現実はなかなかそううまくゆきません。まず何より時間的制約があります。行政手続法に定められる「命令等」に該当する案件では、募集公開から提出期限まで原則30日以上ありますが、多くの任意募集案件では2週間程度しかなく、あっという間に締め切りが来てしまうというのが作業現場の実感です。また、パブコメ募集は年間を通じて一様に出てくるのではなく、かなりバースト的です。ちょうど理事交代時期にあたる6月近辺がピークの1つで、複数の案件がほぼ同時に出てくると、本来は対応するのが望ましいけれど取りこぼしてしまう事態もありえます。
パブコメ募集が公開されてからやおら動き出す受動的プロセスだけでは、どうしても部分的、場当たり的な意見しか出せない危険性も高いので、今後はより待ち伏せ対応を強化したいと考えています。そこで、会員の皆様にお願いですが、行政機関の政策立案に対して学会の看板を掲げて物申したいテーマがあれば、研究会や委員会などの場で普段から議論しておき、(できれば1,000字程度の)ポジションペーパーにまとめてもらえないでしょうか。それを学会事務局経由で政策提言委員会宛に送っていただければ、しかるべきパブコメ募集が出てきたときに有効活用させてもらいます。また、学会Webサイトの研究会ページに掲載されている「
情報学分野の科学・夢ロードマップ2014」のような全分野横断的な提言については、全国大会などの場で公開討議するセッションを設けてもよいかもしれません。この夢ロードマップは、昨年度に提出したパブコメの中でも何回か引用させてもらい重宝しました。是非皆様の見識をパブコメで社会に顕在化させ、「頼られ&相談される」学会を確立させてゆきましょう。