2014年08月04日版:新田 淳(企画担当理事)

  • 2014年08月04日版

    「頼られ&相談される」学会に向けて ~パブコメ対応について~」

    新田 淳(企画担当理事)


     情報処理学会は、「頼られ&相談される」学会を標榜して、行政機関から出されるパブリックコメントの募集(以下パブコメ)に積極的に対応してきました。学会Webサイトの「提言/プレスリリース」ページにその一覧があります。本原稿執筆時点では、7月の高橋理事のメッセージで紹介され皆様の関心も高いと想定される「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に対して意見をまとめているところです。しかし、どのようにパブコメを作成しているかよく見えないという声を聞くことがありますので、この場を借りて少し説明したいと思います。

     パブコメをまとめる役目は、理事会の下に置かれた政策提言委員会が担っています。実際の作業は、企画担当理事(パブコメ編集者)と学会事務局が共同して進めます。より具体的には;
    1. 事務局が行政機関のWebサイトを監視して、学会に関連しそうなパブコメ案件を見つけたら、企画担当理事(および副会長他若干名)にメールで連絡します。
    2. 企画担当理事は、そのパブコメに対応するかどうかを判断し、意見の原案作成を調査研究担当理事や関連する研究会および委員会などに事務局経由で依頼します。最近の事例では、「サイバーセキュリティ2014(案)」についてはセキュリティ委員会を中心に原案を作ってもらいました。「世界最先端IT国家創造宣言 改定(案)」は、特定の委員会や研究会に閉じる話題ではないので、企画担当理事が大まかな原案を作成し、いくつかの部分について関連する理事に具体的な文案作成をお願いしました。
    3. このようにして集めた意見案を、企画担当理事が1つの文書にまとめ、政策提言委員会のメーリングリストで議論します。
    4. そこで作った文案を次に理事会のメーリングリストに流し、出てきた意見を取り入れて修正版を作成し、事務局がパブコメとして提出します。最終提出版には理事会での承認が必要ですが、ほとんどの場合提出期限に間に合わないので、事後に理事会のWeb審議で承認を得るようにしています。
     理想的には、上記プロセスをじっくり回して会長の言うところの「2万人のIT専門家集団を代表したバランスの取れた建設的意見」を作り上げてゆくべきなのですが、現実はなかなかそううまくゆきません。まず何より時間的制約があります。行政手続法に定められる「命令等」に該当する案件では、募集公開から提出期限まで原則30日以上ありますが、多くの任意募集案件では2週間程度しかなく、あっという間に締め切りが来てしまうというのが作業現場の実感です。また、パブコメ募集は年間を通じて一様に出てくるのではなく、かなりバースト的です。ちょうど理事交代時期にあたる6月近辺がピークの1つで、複数の案件がほぼ同時に出てくると、本来は対応するのが望ましいけれど取りこぼしてしまう事態もありえます。

     パブコメ募集が公開されてからやおら動き出す受動的プロセスだけでは、どうしても部分的、場当たり的な意見しか出せない危険性も高いので、今後はより待ち伏せ対応を強化したいと考えています。そこで、会員の皆様にお願いですが、行政機関の政策立案に対して学会の看板を掲げて物申したいテーマがあれば、研究会や委員会などの場で普段から議論しておき、(できれば1,000字程度の)ポジションペーパーにまとめてもらえないでしょうか。それを学会事務局経由で政策提言委員会宛に送っていただければ、しかるべきパブコメ募集が出てきたときに有効活用させてもらいます。また、学会Webサイトの研究会ページに掲載されている「情報学分野の科学・夢ロードマップ2014」のような全分野横断的な提言については、全国大会などの場で公開討議するセッションを設けてもよいかもしれません。この夢ロードマップは、昨年度に提出したパブコメの中でも何回か引用させてもらい重宝しました。是非皆様の見識をパブコメで社会に顕在化させ、「頼られ&相談される」学会を確立させてゆきましょう。