2022年09月29日版:清原 良三(調査研究担当理事)

  • 2022年09月29日版

    「研究会活動を積極的に利用しよう

    清原 良三(調査研究担当理事)


     調査研究担当理事になって1年と数カ月が経ちました。研究会は、3つの領域(コンピュータサイエンス領域、情報環境領域、メディア知能情報領域)に分かれて活動を行っており、それぞれの領域委員長を兼務する形で、調査研究担当理事は3人います。私は情報環境領域を代表していますが、研究会活動を多くの方に積極的に利用していただきたいと思います。

     そのために、各研究会が主査、幹事を中心にいろいろ工夫しています。一度興味ある分野の研究会のWebページを参照してみてほしいと思います。前職の企業勤務時代に、若手の研究者に研究会での発表を勧めたら、敷居が高いので、まずは全国大会に出してからにしますと言われたことがあります。しかし、研究会は完成された研究を発表するだけではなく、研究途上の内容を発表してさまざまな議論を行う場でもあります。ですからどなたでも発表できますし、どなたでも参加できます。たとえば、アイディア段階でも発表できる場を設けている研究会もあります。ライトニングトークとかミニワークショップなどと称し、原稿なしで口頭で簡単な発表とディスカッションができるような場です。

     研究発表会とするとあまり質疑に時間がとれない場合もあるので、ポスターセッションとして、興味のある人がある程度長い時間ディスカッションできるような形にしている場合もあります。ある程度研究の進んだ段階では、研究発表会のほか、シンポジウムという形で発表後も夜まで議論できるような場を設ける場合もあります。COVID-19の影響で一定の対策をとりながら、オンラインも含めて各研究会が工夫しています。

     完成された研究にはさまざまな表彰を設けたり、論文誌への推薦もされます。論文誌での採録が難しいような場合は、トランザクションへの推薦なども用意しています。教員向けには研究の発想段階でのディスカッション、企業の方向けには、知財権確保後の研究途上でのディスカッション、学生向けには、学生をエンカレッジするための各種表彰などを用意しています。このようにさまざまな研究段階で発表できますので、決して敷居は高くありません。ぜひ、積極的に活用をお願い申し上げます。

     また論文誌の委員をしていたころに、多くの論文が投稿され、残念ながら良いところも多いのに不採録になる論文を見てきました。研究会に一度投稿され、ディスカッションし、さまざまな意見を聞いていれば採録できるような形になっていたのではないかと思うような場合も結構ありました。情報処理学会の論文誌では、研究会や国際会議で自身が発表した論文によって新規性を失うことはありませんので、安心して研究会へも出してください。他学会の国際会議や国際ジャーナルなどは、その学会のルールがあるので、なんとも言えませんが、研究会の原稿では、英語のアブストラクトは必須ではありません。ぜひ活用をお願い申し上げます。

     一方、研究会の活動はボランティアの集合です。ボランティアではありますが、研究会活動の運営にかかわることで多くのメリットがあります。さまざまな同分野の研究者と多くの機会で交流できることで、共同研究に発展する場合や、論文誌の特集号の編集に関係することで採録される論文の書き方が分かるなど、得るものは大きいです。研究において成功するには、研究内容そのものは当たり前ですが、多くの人との交流、情報交換、ディスカッションが大切です。このように運営に参加することも含めて、さまざまな観点から研究会を活用することを考えてみてはいかがでしょうか。