「黄色い表紙の学会誌」
木下 哲男(会誌担当理事)
毎月,お手元にお届けしている会誌「情報処理」,会員の皆様には,お楽しみ頂いておられるでしょうか.書籍類の電子化が一段と浸透しつつある昨今,学会の電子図書館で閲覧・利用される方も多いと思いますが,私には,紙媒体で配布される会誌にホッとしてしまうところが未だにあります.
「情報処理」誌との出会いは,私が学生会員として入会した昭和40年代末です.黄色い表紙(といっても,薄黄色とかクリーム色などというのが適切かも知れませんが)に「情報処理」の黒文字も鮮やかな会誌が,毎月,茶封筒に入って郵送されてくるのを楽しみにしていたことを思い出します.当時,学生が手にするようなコンピュータ関係の定期刊行誌は,「bit」という月刊誌(大分前に廃刊になりました)などを除いて殆どありませんでしたので,会誌が運んでくれる最新の記事や論文(当時は論文も一緒に掲載されていたように記憶しています)は,私にとっては貴重な情報源となっていました.多種多様な情報がいつでも,どこでも,素早く,いくらでも手に入る現下の状況とは比べようも無い,実にのんびりした時代でしたが,その分だけ会誌の存在感も大きかったように思われます.もっとも,大掃除や引っ越しを重ねる度に,取り貯めていた黄色い表紙の会誌も(他の学会誌や雑誌と共に)いつしか見えなくなり,いまや実家の物置に残存しているのを期待するのみですが,そのコンテンツは電子図書館から即座に入手できるので安心です.
黄色い表紙の時代がいつまで続いたのか覚えていませんが,その後,表紙のデザインがリニューアルされるようになり,サイズもB5判からA4判となるのにつれて,カラフルでビジュアルなページが増え,記事の内容や種類も一段と充実されました.最近のモニタ調査でも概ね好評という評価を得ており,時代は移れど会誌のもつ意義や役割は変わらず,といえるでしょう.
一方,「情報処理」誌の企画・編集は,会誌編集委員会,及び,その実務を支えるワーキンググループが担当しています.現在,基礎・理論,システム,アプリケーション,教育,会員サービスという5つの分野に関するワーキンググループが設けられ,メンバの皆様には(ボランティアで)ご協力頂いております.通常,殆ど目にする機会のない編集作業ですが,会誌を定期的に刊行するために,発行月を遡る1年以上前から企画を練り,集稿や校正などのスケジュールを調整し,進捗状態を管理するなど,その他の細々とした事柄を含めて手の掛かる仕事です.私自身,会誌を読むだけの身分から編集の一端を担う立場に廻ってみて新たに気付かされたことも多々あって恐縮の至りですが,中島秀之編集長の個性を活かした的確な采配のもと,編集委員会とワーキンググループの皆様の献身的な活動に支えられて,会誌刊行も恙無く進んでいます.編集に携わっておられる皆様には改めて感謝申し上げたいと思います.
こうした編集の苦労が報われるニュースを1つ紹介させて下さい.すでにご存知の方も居られると思いますが,2012年5月に発行された会誌「特集:CGMの現在と未来: 初音ミク,ニコニコ動画,ピアプロの切り拓いた世界」の別刷が,日本SFファングループ連合会議の「第44回星雲賞・ノンフィクション部門」を受賞し,2013年7月20日に広島で開催された第52回日本SF大会で授賞式が行われました.星雲賞は日本のSF及び周辺ジャンルの表彰としては最も長い歴史を誇る権威ある賞ということで,本受賞誌の記事の執筆や編集を担当された方々の悦びもまた一入だろうと思います.
最後になりましたが,会員の皆様には,今後も引き続き,表紙の色やデザインに係らず,紙版と電子版の双方で,会員のための会誌としてご活用頂きたいと願っています.ご意見やご希望などございましたら,随時,編集委員会までお送り下さるようお願い申し上げる次第です.