2022年09月01日版:河合 和哉(標準化担当理事)

  • 2022年09月01日版

    「このごろ思うこと

    河合 和哉(標準化担当理事)


     昨年、標準化担当理事に就任して、はや1年が過ぎました。標準化活動を行っている情報規格調査会は、事務所を学会本部とは別に構えている上に、この1年は学会の会議にもすべてオンラインでの参加のため、みなさんとなかなか交流・連携できていないことが非常に残念です。COVID-19が落ち着いても、これまでと同じ環境には戻らないだろうとは思いますが、みなさんとお会いして、対面でのメリットが活かせるようになる日々が戻ることを待ち望んでいます。

     情報処理学会は、産業標準化に関する調査・審議を行う経済産業省の審議会である日本産業標準調査会(JISC)から情報技術の国際標準化を所掌する、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の共同技術委員会であるJTC 1の国内審議団体を受託しています。学会では情報規格調査会を設置してJTC 1の国内審議を行っており、標準化担当理事は情報規格調査会の委員長を兼任しています。

     JTC 1は、現在、傘下に23の分科委員会(SC)があり、文字コードやプログラミング言語、SQLといったソフトウェア/システム開発の基礎となる規格から、クレジットカード/ICカード/運転免許証/パスポートやCD/DVD/BDといった身近なもの、情報セキュリティやそのマネジメントシステムであるISMSの規格群まで、情報技術に関する幅広い分野をその標準化の対象としています。最近では、AIをはじめ量子コンピューティングやブレイン・コンピュータ・インターフェースといった先端技術分野での活動や、バイオ・デジタル・コンバージェンスといった議論が始まっています。これらの先端技術分野では、先端分野であるが故に、技術開発と標準化が並行して議論されるだけではなく、技術的な議論にとどまらず、その倫理的側面について議論されることが増えているので、標準化活動にも新しい仲間に参加いただくことが必要だと感じています。幅広い分野の議論に参加されている学会のみなさんにも、ぜひ標準化の活動に参加いただければと思います。

     COVID-19の影響により学会の活動と同様に、標準化活動の国際会議も2020年3月から対面形式での開催が禁止されてきましたが、ようやくこの秋から対面での会議も再開になります。情報規格調査会では、10月にクラウドコンピューティングを担当するSC 38の総会を札幌に、11月にJTC 1の総会を東京に招致していましたので、感染対策に配慮しながら、なんとか無事に海外からの参加者を迎えて会議を開催したいと、それぞれ準備を進めているところです。

     標準化の会議は国際会議ということもあり、対面会議だけでは機会が限られるので、オンライン会議がCOVID-19前から活用されていたので、オンライン会議そのものには慣れていました。しかし、すべての会議がオンラインとなって、対面とオンラインのコミュニケーションの違いについて考えることが増えました。標準化の会議では、 “オフライン”と呼ばれる、コーヒーブレイク等の、会議室の外での会話が特に重要になります。会議で議論になると、“オフライン”で、少し時間をかけてお互いの理解を深めて議論の着地点を探ることが解決への近道になるのですが、オンライン会議ではなかなかこれができません。オンライン会議は確かに効率は良いのですが、反面、“オフライン”ができないデメリットを強く感じます。議論だけではなく、対面の機会があるとお互いの顔を見て、「あっ、そういえば……」と用件を思い出すこともよくあると思いますし、会議終了後に駅まで一緒に歩いている時の会話など、会議の場以外でお話する機会がいろいろあると、新しいアイディアが生まれる機会も増えると思いますが、オンライン会議ではなかなかそういう機会がありません。これからの、ニューノーマルな環境では、対面とオンラインでのコミュニケーションの特徴の差を意識しながら上手く使い分けて、創造的・効率的に日々の活動を進めたいと強く思うこのごろです。