「情報技術にかかわる国際標準化活動」
伊藤 智(標準化担当理事)
標準化担当理事に就任し、一年半が過ぎました。学会の下部組織である情報規格調査会の委員長として、主にISO/IEC JTC 1で進められる情報技術の国際標準化に関わっています。そこで、情報規格調査会での最近の活動状況をご紹介したいと思います。
今、情報技術の国際標準化でホットな話題は ビッグデータとインターネットオブシングスです。昨年11月に、新しい作業グループWG 9およびWG 10の設立が決まり、今年から本格的な活動がスタートしました。どちらも、産学官の多くの組織が強い関心を示しているトピックであり、国内に委員会を設置して参画者の募集を行ったところ、多くの方々から参加の申し込みをいただきました。3月2日に第1回目の国内委員会を開催予定です。活動の最初は、用語定義とリファレンスアーキテクチャの開発から始まります。リファレンスアーキテクチャは、最近ではクラウドコンピューティングに関して開発された規格があり、さまざまな機能を構成要素として有する場合には、基本的な規格となっています。完成までに2年ほどかかる、長い道のりではありますが、今後、用語定義とリファレンスアーキテクチャをベースとして、多数の規格をこの上に開発していくことが予定されています。ビッグデータの活用もインターネットオブシングスの活用も、まだまだこれから伸びていく分野ですので、技術の発展や産業界の具体的な活用と平行した標準化が必要となります。本学会の中でも、多くの方がこれらの分野で活躍されていることと思います。是非とも、積極的な関与を期待します。
標準化の活動としては、新しい規格を策定すること以外にも、採用を促すような普及・啓蒙活動も重要です。情報規格調査会では、多くの方に標準化活動の状況や有用な規格の内容を知っていただくため、今年度からセミナーを開くことにしました。今年度はmpegなどの映像圧縮に関する規格と情報セキュリティに関する規格の2回を実施しました。実際に国際標準化に貢献している人たちによる、最新の情報を現場の声でお届けすることができ、どちらの回も満席の参加者をいただき盛況にて終了することができました。今後も、多くの方々に興味を持っていただけそうなトピックに焦点を当てて、標準化セミナーを開催したいと考えていますので、どうぞご期待ください。
さて、ISO/IEC JTC 1における国際標準化は、テーマの提案から策定・発行まで、標準的な設定で、24カ月かかります。スピードが重要なITの世界において、2年の期間は決して短くはありません。一方で、国際標準化のプロセスは、標準化団体によって流儀が異なることもあり、長年関与して経験していかないと、思い通りに活動していくことが難しい状況です。そのため、標準化に貢献している方々の活動期間は、一般的に非常に長くなっており、企業、大学等において、活動を引き継ぐ後継者不足が問題となっています。しかし、組織の経営層の方々には、国際標準の重要性を強くご理解いただくとともに、国際標準化を担う人の活動を評価し、標準化への人材の投入と教育に、積極的になっていただくことを願うしだいです。
かく言う私も、標準化には長く関わっていかねばならないと考えております。今後とも、よろしくお願いいたします。