2016年05月02日版:後藤 真孝(新世代担当理事)

  • 2016年05月02日版

    「やんちゃなアイディアで情報処理学会を変えて欲しい。

    後藤 真孝(新世代担当理事)

     私が2014年6月に初代の新世代担当理事を拝命したとき、喜連川会長(当時)からタイトルの言葉を言われました。喜連川会長が学会誌2013年7月号に『本会ももっと何事にも「若手枠」を作り、闊達な場をどしどし提供し、若手にやんちゃな試みをしていただくのが良いように感じます。そこから次の世代の研究者が求める学会像の本質が見えるかもしれません。』と書かれていて、そのときには共感しつつも自分がかかわるとは思っていなかったのですが、その1年後から理事としてかかわるチャンスをいただき、もうすぐ2年間の理事の任期が終わろうとしています。
     
     「委員長として新世代企画委員会を立ち上げてください。」 それが、まだ学会理事としての仕事の進め方が分からない就任直後の最初の仕事でした。突出した活躍をしていてアイディアが豊富な6名の研究者(稲見昌彦委員、落合陽一委員、坂本大介委員、寺田努委員、西田健志委員、宮下芳明委員)に委員就任をお願いし、全員にご快諾いただけて、他の理事の委員の皆さまとともに何とか委員会を立ち上げることができました。
     
     白紙の状態から始まったため、まずは、
    (1) やんちゃなアイディアを提案して、次世代の研究者が求める学会像の本質を追求する。
    (2) 今後の学会が継続的に採用できる枠組みや制度を作って、持続発展する貢献を目指す。
    という2つのゴールを決めました。次に、委員会の進め方にも新世代のアイディアを導入して未来の委員会の姿を示そう、ということで、対面の会議とテキストチャットを同時並行的に進める形式にしました。これによって誰かの発言中であっても、各委員がいつでも気軽に発言でき、限られた時間を有効に使って議論が加速できるようになりました。音声のみによる遠隔参加も歓迎していたので、そうした遠隔で発言権を得にくい委員にとって、いつでも意見を書けるこのチャットは特に有効でした。学会事務局も当初はこのスタイルに驚きつつ、その利点を実感いただけました。
     
     そこからは1〜2カ月に一度の新世代企画委員会の場が、さまざまなアイディアを楽しく議論する場になりました。2年間で実現した取り組みのすべては紹介できないのですが、学会員の皆さまから見ると、下記の点が変わりました。
    • 2015年3月の全国大会から、新進気鋭の若手研究者らが登壇発表する「IPSJ-ONE」2015年の初回)が始まりました。各研究会には若手のスター研究者がいるのに、その発表に分野を超えて触れられる機会が少なかった、という問題意識を我々は持っており、希望する研究会から推薦してもらった招待講演者が1人5分で次々と登壇する機会を作りました。上記の生中継も活用し、中高生・大学生等の次世代の方々にも関心を持ってもらえるステージを目指しました。
    • 「情報処理学会チャットシステム」の公式運用を開始しました。本学会の研究発表会やイベント等で、登壇発表中に聴講者同士がテキストチャットでコミュニケーションして、発表内容への理解を深めやすくなりました。希望する会議主催者が、事前申請なしで自由に利用することができます。 
    • 「勉強会フォーラム」が始まりました。日本各地で開催されている勉強会情報を、その主催者が望めば記録・蓄積することが可能になりました。
    • 「ジュニア会員制度」が始まりました。小中高校生、高専生、大学学部1〜3年生が、無料会員になれます。学会誌・論文等を閲覧でき、学術コンテンツに気軽に触れられる機会が増えました。
     以上は、新世代企画委員会、理事会、学会事務局の皆さまをはじめとした、多くの方々が推進・協力・応援してくださった結果、はじめて実現可能になりました。特に、ニコニコ動画・静画関連では株式会社ドワンゴの皆さま、IPSJ-ONEでは「IPSJ-ONE企画・実施委員会」や研究会、スポンサーの皆さま、ジュニア会員制度では他の関連委員会の皆さまによる多大なご尽力により実現されました。そのすべての方々に感謝いたします。情報処理学会はきわめて柔軟で、新たな取り組みに挑戦したり、不要な取り組みをやめたりすることができる組織だということを、理事になって実感しました。
     
     もし皆さまがタイトルの言葉を言われたら、どんなアイディアを実現したいでしょうか? そうした意見を学会に届けていただければ、情報処理学会はより魅力的に変わり続けていくと思います。