国境を越えたつながりが情報社会にとって当然であるように、情報処理学会の活動もグローバルな連携が求められます。現在、情報処理学会では、IEEE Computer Society、ACMに加え、韓国のKIISE(The Korean Institute of Information Scientists and Engineers
http://www.kiise.or.kr/eng/)、中国のCCF(China Computer Federation http://www.ccf.org.cn/sites/ccf/)との間で連携促進の覚書を交わしており、具体的な活動に向けた議論を進めています。
3月の第78回情報処理全国大会では、IEEE Computer Societyの Roger U. FUJII会長と、CCFのWen GAO会長による招待講演がありました。会長や学会役員が相互に訪問しあい、学会の状況、課題、取組みを共有することが相互交流の促進のベースとなります。今回は、同時に来日していただいた韓国KIISEのChoong Seon HONG会長を交え、中国CCF、韓国KIISEと情報処理学会による、3か国連携の取り組みについても議論がスタートしました。
IEEE Computer Societyとは、前述のとおり、会長による情報処理全国大会での招待講演が定例になっていることに加え、国際会議の共同開催などの実績が多くあります。IEEE Computer Societyのフラッグシップ会議のひとつであるCOMPSAC(the IEEE Computer Society Signature Conference on Computers, Software, and Applications)は、情報処理学会とIEEE Computer Societyの共同事業として実施してき国際会議SAINT(International Symposium on Applications and the Internet)を引き継ぐ形で情報処理学会が共催しています。
情報処理学会が主催のIPSJ International AI Programming Contest: SamurAI Codingでは、初回からIEEE Computer Societyがスポンサーに加わり、2014年には韓国のKIISEが、2015年には中国CCFがスポンサーに加わるなど、グローバルな連携が広がっています。
以上のような組織同士の連携活動だけでなく、個々の情報処理学会員にとって直接のメリットとなる連携も始まっています。IEEE Computer Societyとの連携では、情報処理学会員に限り、IEEE Computer Societyの主要3雑誌(Computer、IT Pro、Software)のデジタル版を年間10ドルで購読できるサービス(https://www.computer.org/web/sister-societies/ipsj)が始まりました。
このように学会活動のグローバルな連携は、学会トップやスタッフの相互訪問、国際会議やイベントの共催、学会誌への相互寄稿や相互購読など多岐にわたります。これらの連携活動では双方の担当メンバの友好関係がベースとなりますが、地理的な距離や言語の違いがあるため、友好関係の構築には時間がかかります。このため、情報処理学会では、長期戦略担当理事と、それぞれの活動を担当する理事(調査研究、出版、事業等)が共同でグローバル連携に取り組みます。
国と国との関係は、時に政治や経済面でギクシャクすることもあります。そのような場合であっても、それぞれの学会の技術者同士、研究者同士の良好な関係が継続できていれば、学会として健全な国際関係の維持にも寄与できるはずです。