「ピアレビューと学会編集委員会」
相澤 彰子(論文誌担当理事)
論文誌担当理事を拝命して1年数ヶ月が経ちました。担当理事の重要な仕事の1つに、毎月開催される論文誌ジャーナル編集委員会(幹事会)があります。委員会では、基盤・ネットワーク・知能・情報システムの4グループおよびJournal of Information Processing(JIP)の幹事、学会の編集委員会事務局メンバが集まり、よりよい論文誌をより円滑に編集するため、知恵を絞ります。
論文誌の編集をさまざまな角度から見ていると、「ピアレビュー(peer review)」という仕組みのスゴさを改めて感じます。ピアレビューの根底には、ワタシが投稿した論文を誰かが査読してくれる、かわりにワタシも誰かが投稿した論文を査読するという、持ちつ持たれつの精神があります。
1本の投稿論文が出版されるまでの過程では、メタ査読者、査読委員はもちろんのこと、主査・副査、編集委員会のメンバなど多くの人が査読経過や判定結果の確認にかかわります。採録後も、目次のカテゴリ付与や表彰論文の選考などがあります。そのようにして年間のべ何千人もの専門家を動員するパワーの源が「ピアレビュー」であり、この考え方が研究者コミュニティに根付いているからこそ、学会による論文出版が可能になります。まさに科学の基盤といえます。
論文誌の活性度をはかる尺度としては、掲載論文数と被引用数の2つが代表的です。掲載論文数は学会の収益に直結するものですし、被引用数から計算されるインパクトファクターは投稿数やダウンロード数に大きな影響力を持ちます。数値化されにくいピアレビュー・システムは、ややもすると当たり前のものとして見過ごされがちですが、論文出版の価値はここから生まれてきます。
したがって、先人たちが築き上げてきた「ピアレビュー」の基盤を受け継ぎ、堅牢な形で次の世代に受け渡すことは、編集委員会の最も重要なミッションです。たとえば、グループ会議における査読結果の合議は、単に査読の質を高めるというだけではなく、新任の編集委員がメタ査読の書き方や採否に迷ったときの判断基準を学んだり、編集委員どうしで不適切な査読コメントの見つけ方や査読者の見つけ方のノウハウを共有したりする場として機能します。私自身も幹事会で著作権や投稿規程などについて多くを学ばせていただきました。編集委員会は学びの場でもあります。
論文誌編集委員会で検討するべきことは多岐に渡ります。理事を拝命してからの検討事項のいくつかを挙げると、査読期間の短縮、査読システムの新システムへの移行、論文の電子付録データ受付、二重投稿に関する規定の整理、一層の国際化に向けたJIPのプロモーションなどがあります。いずれも一人の任期中に片付けられることではなく、幹事会のメンバが学会事務局と力をあわせて、一歩ずつ進めていく必要があります。ピアレビュー・システムという財産を守るため、そして、次の編集委員会の始動に向けて、現在の活動をしっかりと引き継いでいきたいと思います。